働く広場2019年8月号
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るのか明確だとわかりやすい」と、Bさんは、「お互いに行動に表れにくい心意気、物事への向き合い方を尊重することが大切だと思う」という。またBさんは、「世間には、障害を﹃ギフト﹄とみなす論調もあると、個人的に思っている。しかし、それは人より優れている面が強調されたときに、主にそう見えるのであって、表からは見えない葛藤に、深刻に苦しむ当事者がいる。当事者は新しい環境に順応することが、とてもたいへんだと思う。新しい環境のもとでは、自分自身の感情をうまくコントロールできず、上手にアウトプットできない場合が多々ある。そのために、当事者と企業が互いに内面を理解し、ともにゆっくり歩んでいくことが重要なのかもしれない」と話してくれた。今回は、障害のある学生(卒業生)と、学生を支援する大学側の双方にお話をうかがったが、私自身、企業の人事担当者としても気づかされることが多かった。今後、私自身も大学ともさまざまな観点から連携をはかり、障害のある学生に直接お話をうかがう機会を増やし、社員が互いに個性を尊重しあい、だれもが安心して自分らしく働ける環境となるよう、さらに整えていきたい。感情的経験と知識が積めるか。いかに社会、人間というものに対し豊かな価値観が育めるかが重要です」と話してくれた。また、卒業後の進路についての不安も聞いてみた。Aさんは、「書類選考や面接のみで、私を採用しようと思う会社があるのか不安に思う。また就職後も、正社員として体調を崩さずに毎日勤務できるのか不安」という。Bさんは、「大学を卒業し、自分で考え判断する比率と、その重みが上がったときに、外部や自分の内面に対する認知が一方向に過度に偏っていかないか不安に思います。責任を背負うに足る人間になれるだろうか」と話してくれた。自分にとって「働きやすさ」とは、という質問について、Aさんは「自分らしくいられる、居心地のよい場所だと働きやすいですね。仕事の内容よりも、対人関係がスムーズであることが自分にとっては大切ですから」という。またBさんも「自分と周囲、双方向で理解しあい、自分のステージにあった幅広い物事を経験できる場所」と話してくれた。最後に、企業の人事担当者に伝えたいことを聞いた。Aさんは、「どのような人材を求めていと思っていたのですが、支援室に通い始めて、見守ってくれる存在を得ることができました。とても感謝しています。私を担当してくださっている吉野さんには特に、私の卒業を見届けてほしいと思います。去年、私を受け入れてくださったように、これからもどんな人でも受け入れる場所、開かれた場所であってほしいです」と話す。発達障害のある人の支援は、支援する人とされる人の相性のよさが重要なため、Aさんのケースのように、同じ人が継続してサポートしてくれることはとても心強い。Bさんも、支援に対して満足していると感謝を述べた。「いろいろな学生が来て、支援室にノウハウが蓄積し、今後も困っている学生の助けになっていくことを期待します。また、当事者同士で会う機会が増えることは、僕自身はうれしいことです。支援室に来ていない発達障害の学生や、普段あまりカウンセリングを受けていないような学生とも話せたらいいなと思う」という。卒業後の進路選択で重点を置いていることについて聞くと、Aさんは「自分らしく無理をせずに活躍できる場所に就職したい」、Bさんは「いかに幅広い実務的、働く広場 2019.8発達障害のある学生にインタビュー25

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