働く広場2019年8月号
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働く広場 2019.8障害者雇用を取り巻く環境は、ここ十年ほどの間でも大きく変化してきた感がある。制度上の変化も大きいが、雇用する企業側の姿勢もだいぶ変わってきた。コンサルタントを入れて環境を整え、福祉の経験者を採用して現場での指導に充あてるなど、障害者枠で採用した社員の定着と戦力化に力を注ぐ企業が目立ってきた。以前はほとんどなかった正社員の待遇としての募集や、フルタイムで新卒初任給程度の給与額を提示する企業も見受けられるようになった。障害者枠を満たすことを急ぐばかりでなく、きちんと戦力化を考え採用する企業が増えてきたことを感じさせる。この変化のひとつとして、発達障害への注目がある。メディアでも「大人の発達障害」の話題は、一時期トレンドになった。障害者雇用においても、これは同様だ。雇用の対象として発達障害のある人に着目し、環境を整えることで戦力化を図る企業も出てきている。なかには、発達障害のある人を中心に採用し、戦力化するための強力なノウハウを構築して成果を出している企業もある。これらの企業ではどのような採用活動を行い、また採用した人を戦力化していくためにどのような工夫を行っているのか。企業の担当者にお話をうかがって気づいたのは、採用したい人物への明確なイメージを持っていることだ。発達障害は、人によってさまざまな特徴が見られる。そのなかで、自社内で対応可能なタイプの方であるか、用意した仕事に馴な染じめそうかを確認して採用を決めている。例えば、コミュニケーションが苦手でも、インターネットによる検索が得意な人を集め、インターネットによる営業先情報などの調査業務を任せる。必要な報告・連絡・相談はすべて社内チャットで行い、彼らの苦手なことをフォローする。こうした企業の基本的な方針は、彼らの苦手なことを努力で克服させようとするのではなく、またフォローのためにほかの社員を四苦八苦させるわけでもなく、はじめからその苦手なことが問題にならないシステムをつくることにある。もちろん、あらゆる特性への対応は不可能だ。だからこそ初めから採用したい人物像を想定し、慎重に応募者を選定していくのである。しかしもちろん、こうした準備を行える企業ばかりではない。もともと障害者採用枠が少なく、2〜3人しか採用の予定がない企業では、前述のような専門のチームをつくるといった採用はむずかしい。すでに雇用をしているという職場もあるだろう。しかし、こうした企業でも、前述の企業のような取組みは参考になる。少人数しか採用しない場合であっても、特性を想定して環境と仕事を準備しておくことは有効だ。ただ、同じ職場で当人にだけ特別なルールやシステムを適用することは、当事者の孤立を招きやすい。できればその部署だけでも、あらかじめ想定する特性をもとに、受け入れやすい仕事戦力化するための工夫が大切社内全体で環境を整備就労移行支援事業所さら就労塾@ぽれぽれ 職業指導員對馬陽一郎発達障害のある人の雇用と職場定着は、社内全体で仕事として取り組もう2

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