働く広場2019年9月号
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働く広場 2019.9ドが遅くなるものです。また年を重ねると体調不良にも陥おちいりやすくなります。そうした際は、製造ラインで作業をするより、非製造の領域に少しずつシフトできればと思っています。弊社では、『この社員はこういうスキルがあります』、『こんな仕事ができます』ということを明確にした『スキルマップ』をつくっています。個々の社員のスキルを把握できれば、リソースを配分できます。また、可能な作業量を把握できれば、高齢化が進む従業員も適材適所で活躍することができます」 元来、この「スキルマップ」は、人材育成のために導入したものでした。しかし今後は、高齢化により従業員の従来のスキルが低下した際、その従業員のほかのスキルがどのぐらいかを見極め、適切な業務へ移行するための指標として、より有効になります。 「品質第一」を方針とする同社では2007(平成19)年から、生産性向上と人材育成を目的として、よりよい方向へと転換するための「Tターンurn Aアラウンドround活動 」を実践しています。この活動の一環として力を注いでいるのが、治じぐ具(※)づくを使っていることがわかったのです。そのスキルを活かすために、パソコンを使ってエクセルでのデータ入力をしてもらうようになりました。現在、さらに活躍の場を広げるため、空き時間を利用して、スキル向上のための訓練をしているところです」 同社では、前述の事例のように個々の従業員のスキルを把握し、そのスキルに合わせて、従業員の配置を行っています。大前さんはこのように続けます。 「障害の有無にかかわらず、高齢化にともない力が弱くなったり、作業スピー語ってくれました。 「私は車いすに乗っていますので、重いものが持てません。ですから作業の際には、聴覚障害のある方々に持ってもらうようお願いしています。その代わり、私は独自で学んだ手話を使って、彼らと従業員との会話をサポートしています。このようにお互いサポートし合えば、たとえ高齢化が進んでも、よりユニバーサルにものづくりができると思います。私自身、チーム内で高齢化をあまり意識することはありません」 同社では、高齢化そのものを抽出して課題とするのではなく、従業員のスキル低下にどのように対応していくか、一人ひとりのできることをどのように増やしていくか、あくまで「ユニバーサルものづくり」のひとつとしてとらえ、従業員の活躍の場を広げています。りです。 「治具は社内で加工できます。現場リーダーから『いまの作業だったら、こんな治具があるといいですね』という意見が出ますので、その意見をもとに製作します。高齢化で作業スピードが遅くなった場合も治具で補えますので、どんどん活用してもらいたいですね」と前田さん。 さらに品質技術グループ主査の松まつ枝えだ幸ゆき大ひろさんはこのように話してくれました。 「治具については、だれもが使いやすいものを目ざしています。障害者が使いやすいということは、健常者も使いやすいということです。高齢の障害者を含めた、従業員すべての作業効率化が図れるように日々改善を進めています」 「弊社には『ユニバーサルものづくり』という考えがあり、そのなかのひとつに高齢化があるととらえています。障害があることと、高齢化によって能力障害があることは同じなのかもしれません。従業員それぞれが個々の能力をチームで理解して、お互い助け合って作業を行う姿勢が大事なのだと思います」と前田さんは話します。 さらに松枝さんは自身のことを例にスキルマップづくりで高齢化にも対応だれもが使いやすい治具を目ざす「ユニバーサルものづくり」のひとつとして車いすでも作業しやすい設計の治具製作スペース「品質第一」の方針が掲げられた作業室※治具:作業を行ううえで、部品や工具を固定するとともに誘導してくれる器具11

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