働く広場2019年9月号
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が根強く残っている。岩﨑さんは大学卒業後、警備会社に勤めていた。一生懸命に仕事に取り組んだその会社は、業績が上がり、規模も拡大し、社員の待遇が改善していたにもかかわらず、社内の雰囲気がよくならないことを不思議に思っていた。そこで、よい会社・よい経営について学ぶべく、社会人大学院生となりMBA(経営学修士)を取得。2012年には『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者である、法政大学大学院教授(当時)の坂本光司氏を知り、翌2013年より法政大学大学院へ入学、坂本ゼミで「人を大切にする経営」について学び始めた。ある日、坂本教授と1対1で話をする機会があったときに、「職に就いている障害者と、就いていない障害者では、寿命に大きな差があること、自分が従事している警備業界でも、今後多くの障害者を雇用することができること」を坂本教授から示唆された。なぜ警備業界では障害者が雇用されないのか、と漠然と感じているだけで、当事者意識がまったくなかった自分、業界の事情を熟知している自分が始めないから雇用が広がらないのだ、と痛感することになる。そして、勤務していた警備会社を辞め、福岡へ移住。警備業の協同受注の窓口会計16人。障害者雇用率39・0%)。ATUは警備会社なので、ほとんどの社員が現場へ直行直帰であり、事務所内の人数は少ない。朝の挨拶、理念唱和、一言訓話の読み上げ、連絡事項の10分程度の短い朝礼を済ませ、業務が始まる。応接コーナーにて、代表取締役の岩いわ﨑さき龍りゅう太た郎ろうさんにお話をうかがった。ついたての後ろでは、赤ちゃんの声がしている。その日休んだ事務職員の代わりに、通常は在宅勤務の従業員が赤ちゃんを連れての出勤だったのである。ATUの多様な人々が活躍する風景を、いきなり目の当たりにした。 警備業に従事する者には警備業法による細かい規定があり、2002(平成14)年までは障害者は従事できなかった。それでも実際は、手帳の保有を隠して働いていた人も多くいたと思われている。法改正により欠格事由の見直しがされたものの、業界内では、「障害者に警備の仕事ができるはずはない」という見方JR博多駅より徒歩10分。4階建てのこじんまりとしたビルの前で、訪問までの時間調整をしていると、視覚障害者が白杖をつきながら歩いてくるのが見えた。その人は訪問先であるビルに入っていった。今回訪問した「ATUホールディングス株式会社」(以下、「ATU」)の、この日の9時15分からの朝礼は、高齢従業員、精神障害のある従業員、さきほど見かけた視覚障害のある従業員、子育て中の在宅勤務の従業員、社長の5人で行われた。ATUの従業員数は49人(うち身体障害4人、知的障害5人、精神障害7人、「障害者雇用できる会社」が目標多様な社員働く広場 2019.9ATU代表取締役の岩﨑龍太郎さん警備業界での障害者雇用に、会社として挑戦ツールの活用とチームワークによる経営アビリンピックでのデモンストレーションに挑戦123POINT21

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