働く広場2019年9月号
24/36

福岡県の保安要員の有効求人倍率は5倍を超え、人手不足が顕著である。非正規雇用者の割合が9割と高い業界だが、ATUは全員正規雇用とし、社会保険にも加入している。手厚く処遇するためには、責任ある仕事をし、他社と比べて高い価格を設定する必要があるため、サービス向上のための研修にはとても力を入れている。まず、新任教育は警備業法の定めでは最低30時間だが、それよりも多くの時間をかける。基本的な対人訓練から始めなければならない人も、本人の意欲を引き出しながら1カ月間かけて教育する。その後も警備業従事者には年に2回の研修が義務づけられているが、法令義務の半年に1回の現任教育に加え、月8時間は座学の教育を行う。職務を分解してわかりやすく教えるジョブコーチは現在4人。支援機関など、外部の人にお願いする企業が多いなか、ATUでは社員がにない、4人のうち3人は障害のある人が担当している。「どこが大事なポイントか」などは障害のある人同士だと伝えやすいことがあるからである。業務内容は、港湾施設・港湾制限区域で通行管理を行う保安警備などが50%、交通誘導が50%。対人対応などの複雑な状況判断が苦手な人が多いものの、障害と比べ、数倍のパフォーマンスを発揮していることがよくわかる。警備員は朝、事務所へ出勤せず現場へ直行し、仕事が終わればそのまま帰宅する。その社員の動きを把握し、急な欠勤によって配置に穴が開かないようにすることが重要である。毎日、全員が家を出るときに出発報告、現場への到着報告を電話で行う。また、在宅勤務の管理担当者が、午前5時から業務にあたる。急な体調不良による欠勤が発生すると、替わりに入る人員を配置する。警備の現場は当然のことながら、管理部門も含めたチームプレーの仕事なのだと強く感じた。そのなかで働く三苫さんは、「自分のできないことや、ほかの人に頼れることは頼ってよいのだと思える」、また「有給休暇を取りやすい」職場であると、話してくれた。仕事も休みも、連携プレーができている証拠である。警備業従事者数は過去20年ずっと微増傾向で、2018年には55万4千人あまり(※1)。警備員を配置できなければ、工事を行えないなど、とても重要な仕事である。しかし昨今、処遇の改善が叫ばれている介護職などと同様に、一般的には賃金が低いといわれている。社であったATUへ入社し、障害者雇用を開始。2年半後に代表取締役に就任した。 障害のある社員第1号として採用された三み苫とま雄ゆう一いち郎ろうさん(35歳)は、勤続4年、精神障害者保健福祉手帳2級を取得している。前職では、スーパーマーケットの品出しなどバックヤードの業務に従事していたが、1日の勤務時間を4時間以上にしたいと希望したがかなわず、転職を決意。福岡市障がい者就労支援センターの協力を得ながら、ハローワークで見つけたATUに応募し、採用された。主に事務業務に従事しているが、社内研修制度を使い、警備員の資格を取得。いまは現場に出て警備業もこなす。国家資格である警備指導教育責任者となり、後輩の指導にもあたっている。事務職員としては、これから警備をすることになる現場の測量などの実地検分、道路使用許可などの書類作成、警察への申請や、警備員の教育、さらには採用まで任されている。ジョブコーチの資格も取得した。また、落ち着いた話しぶりで、話していると安心感を覚える。三苫さんは前職仕事も休みも連携プレー業界の現状 手厚い研修カリキュラム働く広場 2019.9ATUの朝礼警備指導教育責任者としても活躍する三苫雄一郎さん※1 「平成30年における警備業の概況」(警察庁)より22

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る