働く広場2019年9月号
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た。船に積まれているコンテナの入出庫と交通誘導を行っている。古ふる川かわ和かず博ひろさん(64歳)は週に3回、夜間の透析が必要な身体障害1級である。職務に障害が影響することはないが、いざ職を探すと、職種がかぎられていた。障害があっても雇用されるということでATUに就職。「社長のもとで、めいっぱい働いています」と笑顔がこぼれた。この日、古川さんとペアを組んでいたのは中なか島じま正まさ義よしさん(77歳)。ATUには70歳以上の社員が7人いるが、そのうちの一人だった。 広範囲にちらばる社員との連絡には、情報共有ソフトの「Eエバーノートvernote」(※2)を使っている。スマートフォンとこのようなソフトがあれば、一人で現場も任せられる。ただし、管理はできても仕事ぶりを見ることはできないから、巡回をして声をかけたり、事務所に立ち寄ってもらい、顔を見て話すコミュニケーションを大切にしている。「個人面談」というと身構えてしまうので、「雑談しに来て」と伝え、フラットな雰囲気を心がけている。雑談のなかで近況をうかがうなどして、その人の変化をキャッチできれば、的確なアドバイスもできるようになる。岩﨑さんから、ある社員の個別の勤務濃い。靴も決められたものを履いている。たったそれだけのこと、と思うかもしれないが、すぐ横に、それができていない他社の警備員を見ると、基本に忠実であることの大切さがよくわかる。山やま口ぐち泉せん太た郎ろうさん(42歳)は勤続1年あまり。ハローワークの障害者求人に応募し採用された。週5日のフルタイム勤務だ。雨の日も、暑い日も、外に立つ交通誘導はたいへんな仕事だが、「1年経って慣れました」と笑顔で話してくれた。山口さんとの会話から、岩﨑さんが現場の一人ひとりの状況を把握していることがよくわかる。そして、山口さんが立つ現場への入り口を抜け奥へ進むと、スムーズに車を誘導する山やま下した正まさ和かずさん(60代)がいた。ここはまさに道路工事の場所であり、ダンプカーを誘導したり、停めたりと臨機応変な対応が求められるため、ベテランの山下さんが担当していた。このように道路工事といってもいくつもの警備があり、それを人の特性を見ながら配置していくことで、山口さんのように、まだ経験の少ない人でもしっかり警備ができることがよく理解できた。次に、福岡市東区香か椎しいの博多港湾ターミナルへ行っ仕事に慣れてきたら、スポーツジムなどに行くことも考えていると話していた。 事務所を出て岩﨑さんの運転する車で30分。いよいよ道路工事の交通誘導の見学に行く。二つの警備会社が合同で警備をしている現場だが、岩﨑さんの解説を聞くと外見を見ただけで、その違いが判る。ATUの社員は身に着けている反射ベストの色が警備の現場にてツールの活用と心理学に基づくアプローチ働く広場 2019.9工事現場で誘導する山下正和さん交通誘導をする山口泉太郎さん※2 Evernote:パソコンやスマートフォン向けのアプリケーションで、ノートを取るように情報を蓄積することができる24

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