働く広場2019年9月号
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働く広場 2019.9生じるものです。感情コントロールの課題は、職場の人間関係や仕事のパフォーマンス、安定的な出勤など、職業面に影響するだけでなく、気分障害などの二次障害を発症するリスクも考えられるため、しっかり対処することが重要です。○国内の取組み 国内の先駆的な取組みについてヒアリング調査を行い、支援のポイントを以下のように整理しました。・不適切な行動が起こる背景を理解し、状態像に合致した対応を行う・行動観察や周囲からの情報収集を行う・グループ形式の活用は、課題への気づきの促進や当事者同士の心理的支持などの効果が期待できる・慎重なグループ編成や十分な数の支援者の配置、前後の個別場面での丁寧なフォローが不可欠・障害程度や個別の課題を考慮したグループ編成がむずかしい場合、2~3人の少人数グループや、作業活動の一部を活用した対人交流場面を設定する○海外の取組み オーストラリアで高次脳機能障害者の感情コントロールの支援に取り組んでいる施設を訪問し、情報収集を行いました。 ア.不安と抑うつへの認知行動療法 基本的な認知行動療法モデル(ABCモデル)を使用した、単純化した認知再構成法(ものごとのとらえ方を修正する)が行われています。理解力や記憶の定着の課題があるため、問題の特定やゴールの設定を工夫するほか、くり返し教育を実施することが重要です。 障害者職業総合センター職業センターでは、休職中の高次脳機能障害者を対象とした職場復帰支援プログラム、就職を目ざす高次脳機能障害者を対象とした就職支援プログラムを実施しながら、障害特性に起因する職業的課題への補完行動の獲得による作業遂行力や自己管理能力の向上、および職業的課題に関する自己理解の促進を図るための支援技法の開発を進めています。 高次脳機能障害者の就労支援において、怒りや不安、抑うつといった「感情コントロール」に課題がある対象者は少なくありません。障害者職業総合センターの調査研究においても、作業遂行上の問題点として、作業手順の定着や覚えられないといった実務に関連する項目を除くと、「感情コントロール」の問題が比較的多いという結果が出ています。感情コントロールに課題があると、就職・復職に向けた活動への参加や、その後の安定的な就労に支障をきたす恐れがあり、その支援は大変重要です。 このような状況をふまえ、2016(平成28)年度から感情コントロールに課題を抱える高次脳機能障害者への支援技法の開発に取り組み、2018年度末に、実践報告書№33「感情コントロールに課題を抱える高次脳機能障害者への支援~認知と行動に焦点をあてたグループワークの試行~」を作成しました。今回、その一部を紹介します。 技法開発にあたっては、文献調査や国内外の先駆的な取組みについて情報を集め、その結果を基に支援技法を開発し試行しました。○文献調査 高次脳機能障害者の感情コントロールの課題は、「脳損傷そのもの」と「脳損傷によって生じた変化」に起因し、多くの高次脳機能障害者に感情コントロールに課題を抱える高次脳機能障害者への支援障害者職業総合センター職業センター●感情コントロールの課題と支援28

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