働く広場2019年9月号
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働く広場 2019.9中から情報を共有する。「障害特性により生じる課題を許容し配慮することで仕事のパフォーマンスが上がるなら、可能なかぎり臨機応変に対応するというのが当社の方針です。最終面接では、例えば10項目の配慮希望があった場合『八つは配慮しますが、残り二つは〇〇の理由でできません』と説明し、そのうえで入社の意思を確認します」と緑川さん。実は以前、入社後に勤務条件の折り合いがつかず、契約更新できなかった苦い経験があった。時短勤務だったスタッフに「(業務の進捗確認や情報共有のため)朝礼か終礼のどちらかには出てほしい」と伝えたが了解してもらえなかった。緑川さんは「会社で働くということは、みんなと一緒に働くということ。会社において勤務時間は、○○さんの都合だけで決められるものではない」などと説得を試みたがダメだった。しかしいまでは、実習期間や面接の段階で、会社の考え方をしっかりと伝えているためか、本人も「会社で働くこと」を意識して勤務条件などを考え直すことも少なくないという。入社後も「会社での働き方」について自ら少しずつ模索していけるよう、うながしている。あるスタッフは、仕事の手順が少ししか変わらない場合でも、マニュアルを新しくしたり、増やすよう配慮を求めていた。だが、なかには1回しか使わないケースや、自分でちょっと書き加えるだけで済むケースもある。福田さんは「困ったときには聞いてくれたらいいから、新しいマニュアルなしでやってみようか」と提案してみるという。その通りにしてうまくいけば本人の自信につながり、会社としても作業が一つ省ける。あるスタッフは確認作業について「自分が最終的なチェックを担当するのは責任問題になるので、ダブルチェックしてほしい」と希望してきた。福田さんは「気持ちはわかるけれども、それではいつまでも成長できないし、達成感もないんじゃないかな。自分でできるダブルチェックの方法を考えてみよう」と伝えたところ「そうですね」と納得し、実際に一人でチェックができるようになった。「マニュアルもダブルチェックも、会社側がサポートできないことではありませんが、ずっと続ければ生産性の低下にもつながります。この業務支援グループにも『時間あたりの作業量』や『納期』が求められています。そういう観点を理解してもらうことも私たちの務めです」と緑川さんは説明する。スタッフによっては「納得できる日とできない日がある」ので、調子が安定しているときを見計らって話しているそうだ。また「会社で働くこと」において大切な「周囲とのかかわり方」についても現場で試行錯誤してきたと緑川さんは話す。「スタッフ同士の摩擦はしょっちゅうです。『こんなことをいわれた』、『あの人の癖が嫌だ』など、細かい話を挙げるとキリがありません。でも、摩擦が原因で相手を責めたり自分自身が苦しくなったりしないように、いかに協働していくかを意識できるよう、個々にアドバイスして販売促進ツール作成業務では、店舗で使用するPOPやチラシのデザインも行う大型プリンタで出力したPOPの裁断作業カートを押して店舗清掃へ向かう伊い藤とう雅まさ行ゆきさん6

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