働く広場2019年10月号
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「自立」について、自身の考えを深めることから始めてみては、と提案した。井手さんは、いまはまだ肉体的にも精神的にも余裕がなく、就職や復職をするには準備期間が必要と考えていたので、齊場さんの提案を受けることにした。井手さんは今後について、作業療法士の資格を活かして当病院への就職も考えているが、かぶと山エム・エスへの就職も視野に入れている。現在は就労継続支援B型事業所「Sシンビーymbi」を利用し、また、リハビリテーションシェアハウス「Gグレイrey Hヘロンeron」で管理業務のOJTを受けながら、これからの人生設計を模索している。❶就労継続支援B型事業所「Symbi」 「Symbi」ではこの日、野菜(オクラときゅうり)の選別と袋詰めの作業を行っていた。「Symbi」について井手さんの感想を聞くと、「車いすで手作業中心の仕事なので体幹を支えることがきついときもあるが、ほかの利用者やスタッフとの交流から就労について求めるものがそれぞれ異なること、また野菜の出来・不出来の見分け方など、いままで知らなかったことを多く学ぶことができた」という。 また、静寂ななかで作業が淡々と進む環境に、「利用者のリラックスを目的に館内でBGMを流しては」と提案。BGM導入により、作業の効率やほかの利用者、スタッフとのコミュニケーションもよくなっして暮らせるシステムとサービスが税金によって保証されている。両国のお金の使い方の違いは「生活の豊かさ」にもつながっていると痛感したそうだ。デンマーク留学を終えて日本に帰国した井手さんは、大学院卒業後の就職は2〜3カ月休養してからゆっくり考えようと思っていたところ、再び大熊さんから「久留米リハビリテーション病院の齊場先生に、あなたの就職のことを相談している」と、突然の電話があった。そして、この新しいプロジェクトに参加することをすすめられた。実家が福岡県にある井手さんは、両親と相談した結果、今年6月から久留米での生活を始めた。大熊さんから紹介された齊場さんとは、このとき初対面。ちょうどだれかにこれからの生活や仕事のことを相談したいと思っていたので、車いすユーザーである齊場さんは、障害のある先輩として助言してもらえるのではと思い、二人の交流が始まった。齊場さんは井手さんに、交通事故による中途障害を背負ったこと、大学院での社会福祉研究の学び、デンマークの海外留学の経験を活かして「障害」、「就労」、である。これは無償ボランティアでなく、障害者が自分の介護に適かなった学生を雇うというシステムがある。デンマーク語も英語も話せなかった井手さんだが、このシステムを活用して、いろんな学生と触れ合うことを大切にした。井手さんに「1年間の留学で得たものは?」と聞くと、次のように答えてくれた。日本では、車いすで移動するとほとんどの人が車いすを避けて歩き、「やはり自分は障害者だな」と感じることが多かったという。しかしデンマークでは、行き交う人々は車いすを避けることなく自然に通り過ぎていく。ときには車いすの自分から道を譲らなければならないこともあって、その感覚が新鮮だったという。また、消費税が25%、所得税52%のデンマークに比べて日本は税金が低いけれど、私たちの税金がどのように社会に還元されているのか、わかりにくい。一方デンマークでは、医療費・教育費が無料であり、子どもが産まれても、障害者になっても、高齢者になっても安心現在の生活働く広場 2019.10Symbiでのオクラの袋詰め見晴らし抜群のテラス24

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