生、個性や価値観、可能性までもが見落とされているのではないか。もっとこの人の可能性(再就職など)について検討すべきでは」と異論を唱えたが、スタッフからの反応はほとんどなかったという。井手さんのプログラムは始まったばかりだが、当病院が取り組むこのプログラムは、就職に向けた知識と技術だけを身につけるものではなく、「人」の成長を包ほう含がんしたものである。院長の柴田さんは、「働くこと」による社会参加の場の確保を目的とする医療を、また、同病院の福祉施設準備室長で、「久留米市やまもとのまちづくり計画」のチームに参加する齊場さんは、障害の程度にとらわれない、その人の可能性に気づき、広げていく社会福祉をと、それぞれの思いが井手さんのプログラムに込められていることを、今回の取材で強く感じた。最後に、これからの目標について井手さんにたずねると、「多くの福祉プロフェッショナルの声や行動により、障害当事者が伝えたい声がかき消されることがあるので、それを社会に伝えられるようになりたい。そして山本町が、Hyggeの提唱する『誰もが、のんびり、ゆったり、気分良く』暮らしていける町になるように、自分の役割をここで見つけたい」という。この彼のコメントに、障害者としてではなく、一人の〝人〞としての言葉を感じた。きる。井手さんはここで、自然のリラクゼーションを利用した、さまざまな形の交流を考えていきたいと語った。 現在、このハウスの入居者は、井手さんだけである。井手さんは、今後入居してくる人たちとの新しい出会いを楽しみに待っている。❸そのほかのプログラムリハビリテーション:週2回、久留米リハビリテーション病院で外来リハビリを受けている。ヘルパー:井手さんの障害支援区分は4。見守り、生活介護を中心とした居宅介護サービスを利用している。レクチャー:齊場さんとの個別ミーティングや、外部の福祉関係の人たちとの話し合いに参加しながら、齊場さんから考えを深めることを提案された「障害」、「就労」、「自立」について、自分の考えを整理している。 先日、齊場さんが交通事故後遺症のある65歳の患者さんのカンファレンスに参加した際、多くのスタッフが「障害の程度が重く介護がたいへんなので、退院後は特別養護老人ホームに」という結論になったそうだ。その結果に齊場さんは「人生90年の時代に、その人のこれからの人たそうだ。❷リハビリテーションシェアハウス 「Grey Heron」 「Grey Heron」は、リビングと寝室、バス・トイレと三つのスぺースに分かれていて、室内を車いすで自由に移動できる。部屋の広さ、設備面ともに使いやすい設計になっている。 特におすすめの場所は、「ワンルームリフトケアシステム」の部屋と、2階のテラスだという。バリアフリー設計のハウス内を、井手さんの案内で見学した。 まず、「ワンルームリフトケアシステム」の部屋を見学した。「ワンルームリフトケアシステム」とは、齊場さんを中心に、久留米リハビリテーション病院と企業が連携して、在宅・家族介護の軽減、本人の自立度アップを目的に、リフトを活用した住宅研究を進めており、それをもとに設計された部屋である。そのモデルルームが「Grey Heron」に1部屋ある。井手さんの部屋と同じ三つのスぺース(リビング、寝室、バス・トイレ)を、すべてリフトによる移動と介助で行えるようになっている。 井手さんは、部屋に設備されているリフトを実際に試しながら、使いやすさや課題などを検証している。 次に、2階を見学した。そこには屋外型テラスがあり、そこからは緑豊かな山本町の自然、遠くに見える山々が一望で取材を終えて働く広場 2019.10月SymbiSymbi 午前午後火リハビリSymbi水(ヘルパ-)Symbi木リハビリレクチャ-金SymbiSymbi井手さんの一週間のスケジュール25
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