働く広場2019年10月号
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働く広場 2019.10場において支障となっている事情の有無を視覚障害者に確認した事業主の割合は77・3%、職場において支障となっている事情の改善措置の希望を申し出た視覚障害者の割合は69・1%で、何らかの配慮を受けた視覚障害者の割合である91・5%よりも低い値であることがわかりました(図表1)。これらの確認や申出が契機となり、その後の十分な話合いが行われればよいのですが、以下に示すように、これは必ずしもそうとは言い切れない結果です。  障害のない人と同様に、働く視覚障害者が仕事を覚え、力量が上がれば、職務内容や配慮の必要性も変化します。事業主による再確認は必要に応じ定期的に行うべきことが指針にも示されていますが、一般的には、仕事の進め方の工夫や課題などは、仕事をしている本人にしかわ  視覚障害者にできること、できないことは何か。この問いに、本誌2018年2月号(※1)で視覚障害者の稲いな垣がき吉よし彦ひこさんが「見えている人と同じ方法ではできないこともある」、「時間がかかることはあっても、できないことはない」と答えています。仕事で一定の条件を満たす結果が出せれば、仕事の方法は違っても人材として活用でき、職業能力を伸ばすことができるという考え方は合理的で、多くの事業主に受け入れられるように思われます。スクリーンリーダー︵画面読上げソフト︶の活用や通勤経路の変更は、そのような「違う方法」のひとつです。  しかしこれまでのさまざまな事例は、こうした合理的なやり方が職場にスムーズに受け入れられるとはかぎらないことを示しています。例えばスクリーンリーダーが仕事でどれだけ役立つのかは、実際に使ってみなければわからない面も多いものです。また、事業主によるスクリーンリーダーの購入とインストール許可、視覚障害者による操作方法の習得、通勤経路の確保など、事業主と視覚障害者の双方がそれなりの努力を払うことになります。さらに、眼疾患の進行や見えなくなっていく過程にある視覚障害者には、その心理にも配慮したいところです。研究の情報収集では、上司や同僚もそれにどのように接してよいかわからないという実状もありました。    厚生労働省の合理的配慮指針では、事業主は採用後の障害者に対して、職場において支障となっている事情の有無を確認し、配慮の内容を障害者と話し合うこととされています。2018︵平成30︶年10〜11月に全国調査を実施し、この「話合い」の実状を確認しました。  前年の2017年度の1年間に全国のハローワークを通じて視覚障害者を雇用した事業所は、全部で1615所でした。調査時点ですでに離職していた視覚障害者もいましたが、採用後継続して雇用されていた視覚障害者のなかから所定の手続きで抽出された366人のうち、採用後に何らかの配慮を受けていた人は91・5%でした。その配慮の前段階となる事業主と視覚障害者との話合いの手続について訊たずねると、職視覚障害者の雇用等の実状及びモデル事例の把握に関する調査研究 障害者職業総合センター研究部門 事業主支援部門 ※1 「働く広場」2018年2月号は、当機構ホームページでご覧いただけます働く広場2018年2月号検索事業主と視覚障害者は配慮事項について話し合っているか ♴問題意識 ♳28図表1 合理的配慮の手続の実施状況(採用後)採用後に職場において支障となっている事情の有無を視覚障害者に確認した事業主採用後に職場において支障となっている事情の改善措置の希望を事業主に申し出た視覚障害者採用後に視覚障害に関わる何らかの配慮を受けた視覚障害者【「希望」の内容(多かった順に)】「出勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮してほしい」「ほかの従業員に対し、障害の内容や必要な配慮などを説明してほしい」「職場内の机などの配置、危険個所を事前に確認させてほしい」 77.3%69.1%91.5%

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