働く広場2019年10月号
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働く広場 2019.10り、配属された部署で存分に活躍してくれるようになり、周囲も本人も疲弊しなくなり、負担感が軽減したという。短期間で辞めてしまうケースもぐっと減ったそうだ。 就業後のソフト面の環境整備・支援も、現場の声を反映させながら充実させてきた。社内には保健師が常駐し、産業医の2人も原則月1回来社する。本人が希望した場合、支援機関を含めた面談は段階的に行っている。面談時には、まず本人と支援機関の担当者が1時間近く話し、その後、支援機関と人事部担当者が15分ほど話す。  「会社側に伝えてもらいたいこと、そうではないこと」を分けて話してもらい、必要に応じて配属先の上長や健康管理・労務管理の担当者も加わる。「会議に参加すると体調への負担が大きいので、しばらくは出席禁止」といった“命令”が出されることもある。年1回、業務や人事とは切り離し、労務管理課による職業生活の相談も行っている。障害者職業生活相談員の資格を持つ社員10人ほどが相談にあたっているそうだ。2016年からは「無給特休(無給の特別休暇)」も導入した。これは障害者手帳に記載された疾患について定期的な検査・治療が必要な場合に、原則月1回の特別休暇(無給だが、ボーナス出勤率には影響しない)を取ることができるというものだ。「有給休暇を取って通院していた従業員からの『これだけで年12日を使ってしまってつらい』という声に応えた措置です。無給にすることで周囲の理解が得られ、休みやすくしました」と児平さんは話す。 ツムラでは、障害者を採用する際は、必ず契約社員からスタートすることになっている。「嘱託の正社員から始めていた時期もありましたが、正社員の就業規則に沿うと勤務時間などが柔軟性に欠けるため、人によっては負担になることがありました。そこで段階的な人事制度にしました」と児平さん。契約社員から嘱託正社員、そして正社員への道筋は、採用時から本人に明確に示してある。まず契約社員として最低1年間(2期分)の評価と出勤率、上長の推薦があれば、嘱託正社員登用への試験(面接・適性検査・能力検査)を受けることができる。嘱託正社員として最低2年間は一定評価、(上長やメンターの異動など)環境変化に問題がなければ、正社員コース登用試験の資格が得られる。試験内容は通常の正社員昇格試験と同じ「論文・業務記述書・面接」。毎年、障害のある方数人が正社員となっている。 上じょう肢し下か肢しリウマチによる障害がある太おお田た直なお子こさん(47歳)は、5年前の2014年に入社した。配属先の生産本部購買部は、商品生産のために使用する包装資材などを調達・購入する部署。太田さんは、注文書の発行や数量・納期の変更処理、新しい品目の受入れに合わせた書類作成などを担当している。太田さんは20代でリウマチと診断された後、無理のないようコールセンターなどで週3日のパートタイム勤務を続けていたが、事務所の閉鎖を機に「正社員で働く最後の機会かもしれない」とハローワークに行き、ツムラを紹介された。採用時の面接では「重い荷物は持てません」といった配慮を求めたが、週5日のフルタイム勤務は覚悟していた。だが人事部から「時短勤務も可能ですよ」と教えてもらい、9時~16時勤務からスタート、一時は9時~16時半まで延ばした。「このままフルタイムへと思っていたのですが、知らぬ間に自分自身に負荷をか通院のための無給特休も道筋が整った人事制度急に休んでも大丈夫「ツムラは周囲の理解度が高く安心して働ける」と話す太田直子さん7

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