働く広場2019年11月号
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働く広場 2019.11二つめは「自己開示(配慮要求)」。朝礼時には、その日の自分の状態を簡潔に全員に伝える「チェックイン」と呼ばれる手続きをふむ。「今朝のエネルギー残量は50%です。今日は、話しかけられてもうまく返せないかもしれません」などと伝える。こうした自己開示をしておくことで、周囲に「私に不満があるのではないか」といった余計な心配をさせずにすむメリットもある。特に体調が崩れやすい週明けには「Sシェア アンド リスタートhare&Restart」と名づけた15分程度の時間を設けている。グループごとに1人ずつ先週の「(仕事やプライベートで)よかったこと、よくなかったこと」を発表する。「パソコンがアップグレードして使いにくい」、「音楽会で人混みに酔った」といった話をいい合うだけで気分が軽くなり頭も活性化し、作業にスムーズに入っていけるという。三つめは「リカバリー(回復行動)」。過度の不安や緊張など精神的なストレスが大きい従業員は、いくら朝の体調がよくても午後2時ぐらいにはふらふらになってしまう。そんな様子を目の当たりにした前山さんは当初、1時間に10分の休憩を入れたが、スマートフォンを触ってしまい、疲れの取れない人が多かった。「業務の一環として回復行動をとってください」と伝えたが、今度は「何をしたらいいのかわからない」という声があがった。そこでグループワークでアイデアを一斉に出してもらい、各自の実践から効果を表にまとめて掲示。一人ひとりが自分に合ったセルフケアを選んで行うことにした。短い仮眠やストレッチ、甘いお菓子を口にするなどさまざまだが、スマートフォンをいじる姿はなくなったという。このセルフケアは予想以上の効果をもたらした。休日などのオフタイムにも実践する人が増え、欠勤する人が激減したという。この「オフタイムマネジメント」が四つめのセルフケアだ。集まったアイデアは「セルフケア道具箱」と名づけられ、いまも日々更新されている。 セルフケアは、職場内の仲間同士で支え合うピアサポートともつながっている。その中心になるのが2016年に発足させた「健康増進チーム」だ。メンバーは「体調が比較的安定し、人の話を聞くのがうまい」と支援スタッフから推薦があった3人で、週1回ほかの同僚のヒアリングを担当する。内容は業務・体調・セルフケア対処法・人間関係・よかったことなど幅広い。同僚からも好評で、つい時間が長引くため「10分以内」としたほどだ。ヒアリング内容や客観的な印象などを「困ったノート」に簡潔にまとめ、支援スタッフを含めた健康増進チームで情報共有している。「彼ら同士だからこそ話せるような悩みや不安を、日ごろから職場内で把握することで、体調が大きく崩れる前にフォローしやすくなりました。さらにメンバー自身もリーダーシップを発揮できるようになり、支援スタッフの担当していた業務も単独でこなすようになるなど、さまざまな波及効果が生まれています」健康増進チームのメンバーの1人、持もち田だ健けん一いちさん(37歳)は2012年入社の最古参で、同僚たちからの信頼も厚い。障害者職業生活相談員資格認定講習も受講した。「みんなとは先輩後輩といった感じはありません。横のつながりを強くしながら、活気のある職場にしていきたいです」と話す持田さん。実は前職の職場は気軽に話せる同僚がおらず、寂しかったという。「オーシャンでは仲間がどんどん増え職場内のピアサポート健康増進チームの持田健一さんは、事業所内の事務用品の管理なども担当している「セルフケア道具箱」には、従業員の実体験をもとにした体調や気分を整えるための方法と効果がまとめられている8

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