働く広場2019年11月号
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働く広場 2019.11ないのが、『100人いれば100通りの経験、知識、感性、視点、文化、背景、価値観などがある』ということです。『〇〇の障害がある人は〇〇が苦手』や『〇〇の障害がある人は〇〇の仕事が相ふさわ応しい』といったステレオタイプで考えないこと、加齢による変化も人それぞれ違うということを忘れてはいけません。さらに今後は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の導入による、業務の効率化やデジタル技術を活用したテレワークなど柔軟な働き方が促進されることで、『障害の有無』、『障害種別』、『年齢』にかかわらず、だれもが働きやすい環境へと整っていくことでしょう。だれにとっても働きやすい職場であれば『障害のある社員のためのサポート』という特別な考え方は必要なくなるかもしれません。障害の有無にかかわらず、年齢を重ねることを『経験やスキルがある』というポジティブな観点でとらえれば、『一人ひとりのキャリアアップの意欲を向上させ、一人ひとりの能力の向上が企業の発展につながる』という良い循環が生まれるのではないでしょうか」きくなる前に解決できれば、キャリアアップにつなげることができるのではないでしょうか。また障害のある社員の場合、本人も周囲もできるだけ転職を避け、同じ会社で同じ職務を継続していくことを推進する傾向があるように感じます。現代社会においては障害の有無にかかわらず、働き方、働く場の選択肢は多様です。障害のある方のなかにも『キャリアアップとしての転職』を選択する方がもっと増えても良いのではないかと思います」 障害者雇用の場でも、こうした「キャリアアップとしての転職」が浸透していけば、社会全体でより多様な人材の交流が可能になるのではないでしょうか。 最後に「ダイバーシティ(多様性)」の観点から、障害者雇用についてお話しいただきました。 「ダイバーシティという観点でいうと、その前提として、企業は『すべての社員が働きやすい環境を整えること』があげられます。その取組みを行ううえで忘れてはならダイバーシティの観点からの障害者雇用い気持ち』を後押しし、それが本人のキャリアアップや雇用の継続、さらには企業の発展にもつながると思います」とも語ってくれました。 それでは、障害のある従業員のキャリアアップには、どのようなことが必要となるのでしょうか。 「どうしたら、持っている能力を最大限発揮できるのかを、会社側も障害のある社員もつねに考えながら業務に取り組んでいくことが大事です。半年に1回程度は、障害のある社員自身も『目標に向けてどのように取り組んできたのか』を振り返り、もし目標が達成できていなかったら、その要因を探り、具体的な対策を練ることも大切です。つねに前に進んでいくのがキャリアアップですから、『働く環境や業務内容に問題はないか』、『周囲も本人も固定の価値観にとらわれていないか』など、障害のある社員自身も『自分がどう働きたいか』を振り返ってみると、年齢に関係なく、早い段階で目標に対する課題が見えてくるはずです。その課題が大障害者のキャリアアップを促進していくまとめ第1回(2019年7月号)厚生労働省の2018年「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書の内容をふまえた雇用継続支援のあり方のポイント● できる仕事への移行と配置転換を視野に入れたキャリア形成促進● 福祉と連携した生活面の支援体制の充実●職業生活全体の再設計● 関係機関の協力を得ながらていねいな話し合いを行う場の確保第2回〜4回(2019年8月号〜10月号)雇用継続の取組み事例にみる、働く現場での取組みのポイント● 「作業分解」「治具の活用」によるできる仕事への移行と配置転換によるキャリア形成● ていねいで定期的な個別面談や、企業在籍型職場適応援助者の個別的な支援や状況把握による、勤務形態や作業内容の見直し、短時間勤務への切り替え●屋外作業から屋内作業への配置転換第5回(最終回)雇用管理の考え方● 社員と事業者のどちらにも「加齢(年を重ねること)により、経験、技術力、知識、ノウハウを積み重ねて能力が向上していく」というキャリアアップの観点も重要● 加齢による身体能力の変化などは、すべての障害者に共通する課題ということではなく、障害の有無にかかわらず個人差が大きい● 障害や年齢にかかわらず、社員一人ひとりの状況に応じて、能力を最大限発揮できる環境を整えていくことが、事業者の何より大切な役割*** 障害者個人への配慮、企業側の業務などの見直しの両方を視野に入れた取組みを始めていくことが、いま事業者にできることなのかもしれません。(編集部)11

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