働く広場2019年11月号
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れなかった場合は、改めて研修の時間を設けるなど、柔軟に対応しています。このようにキャリア形成をフォローしていくことで、障害のある方も、定年後の再雇用により70歳を超えても働き続けることのできる職場となっています。読者のみなさんのなかには、クローン病の症状は腹痛や下痢、血便などのため、「外勤作業はむずかしいのでは」との感想を持たれた方もいるかもしれません。しかし、この病気の特徴として、病変と病変の間には正常な状態が続くことから、症状が発生しないための十分な健康管理、特に、食事について徹底した自己管理さえできれば、外勤作業でも働くことができるということを、面談したお二人からうかがいました。他方で、その背景には、上司の方々の現場における雇用管理の体制、特に、複数配置、勤務スケジュールとシフト、資格取得のための研修でのフォロー体制などが必要なことも明らかになりました。こうした、健康に対する自己管理と職場の配慮の相乗効果によって、障害の有無にかかわらず、長く働き続ける人材を育成していこうとするのが、社長の浅妻さんの願いかもしれません。てみます。第一が、「複数配置」です。腹痛などの症状で作業遂行の際、不都合が起きないように、現場では予防的に複数配置をします。状況に応じて交代させるとともに、追加要員で現場を補填します。現場での事故を予防するためには不可欠です。また、午前、午後、昼食時に休憩をとりやすいように、人数の多い現場に、交代要員も含めて配置するようにしています。第二に、「勤務スケジュールとシフトの配慮」です。通常の勤務は8時から17時までで、平均すると月6〜7日の休日があります。シフトを組む際は、昼勤と夜勤を連続させません。また、現場の状況に応じて勤務時間の増減が出ますが、残業はないようにしています。第三は、「健康管理」です。日常生活では、特に食事管理が重要です。これに気をつけていれば、クローン病とはいっても症状が出る頻度は極めて少なく、通常の勤務も可能となっています。トイレは現場で借りることになりますが、体調がよい(腸がぜん動しないかぎりは)と頻繁に行く必要もありません。第四は、「資格取得とキャリア形成」です。法律によって警備業務に従事する資格が定められていますし、警備員指導教育責任者になる制度も定められています。そのため、体調不良で研修が受けら特徴とクローン病の人が働く際の配慮事項についてうかがうことができました。交通誘導という仕事は、チームワークが最も重要です。そのため、同社では配属するメンバーについては、個々人の能力の過不足を十分に勘案するとともに、チーム全体として最大の能力を発揮できるように編成して送り出しています。障害の有無で従業員を区別するという発想ではなく、障害によって仕事に課題が生じるようであれば、必ず、それを補完するチーム編成をしています。チームワークが不十分なために現場で事故が発生したとなれば一大事ですから、警備業務の研修では、この点を徹底して教育しています。また、警備業務の現場は365日稼働していますが、それはいい換えると、シフトに融通が利きやすい職場でもあるということです。そのため、障害のある社員から休暇や通院の希望が出されたら、優先的に融通させることも可能です。また、現場での長時間勤務であれば、適宜交代して休息をとるなど、勤務時間も融通できます。クローン病のお二人に対する配慮も、基本的にはこうした交通誘導業務の特徴をふまえたものです。また当然のことながら、主治医の意見も尊重した雇用管理を行っていますので、その要点をまとめまとめ働く広場 2019.11警備業法によって定められた現任教育、警備業務に求められる資格の取得などを通してキャリア形成が図られる(写真提供:全日警サービス長野)25

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