働く広場2019年11月号
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働く広場 2019.11  近年の傾向として、既存のMWSでは認知的な負荷が低く、作業遂行力の評価・訓練として機能しない場面があるとの指摘を受け、新規課題では、従来のMWSのコンセプトを継承しつつ、より難易度を高めたワークサンプルを開発しました。 (1)MWS新規課題に共通する特徴  新規課題では、作業のルールや作業に用いる資料が複雑になりました。そのため、「サブブック」という冊子に必要な手続きなどを記載することにしました。対象者は、支援者から簡単な教示を受けたあと、一人でサブブックに書かれたルールを読み、理解し、そのルールを的確に運用する必要があります。したがって、「文書に記載されたルールを理解する力」「理解したルールを的確に運用する力」は、新規課題に共通して把握できる力の一つとなります。 (2)MWS「給与計算」の特徴  「給与計算」(図1)は、OA作業の領域に属す 「ワークサンプル幕張版」(Makuhari Work Sample: 以下、「MWS」)は、「職場適応促進のためのトータルパッケージ」(以下、「トータルパッケージ」)を構成する職業リハビリテーションのためのツールの一つとして、障害者職業総合センター研究部門が開発したワークサンプルです。トータルパッケージとは、対象者の障害の状況を把握し、把握された状況に応じて対象者がセルフマネジメントできるよう、作業を遂行するうえでの特性などの理解や、作業を遂行する力の向上、それがうまくいかない場合の補完方法の獲得、またその際に生じるストレス・疲労への対処方法の獲得などを支援するツール・技法群の総称です。  なかでもMWSは、作業内容と難易度の異なる13種類のワークサンプルについて、それぞれ簡易版と訓練版を備え、作業遂行力の評価及び訓練に活用されてきました。簡易版では、比較的短い時間でさまざまなワークサンプルを体験することができ、対象者自身が自分に合った作業などを見つけたり、自身の障害が作業にどのように影響するかを確認することができます。また、訓練版では、段階的に難しくなっていくレベルが設定されており、作業遂行力向上のための訓練に活用できるほか、簡易版で把握できた自分の課題を解決するための手段や方法、あるいは環境調整の必要性などを明らかにしていくことができます。  1999(平成11)年にMWSを含むトータルパッケージの開発が開始された当初は、精神障害(統合失調症)、高次脳機能障害のある方を主な対象としていましたが、現在では、障害の種類を問わず、多くの方に利用されています。特に、近年は、障害者雇用の対象となる障害の種類の拡大の影響などもあり、知的障害をともなわない発達障害や精神障害(気分障害)のある方に対するMWS活用のニーズが高まってきています。  そこで、2013(平成25)年から既存のワークサンプルの改訂と新しいワークサンプルの開発を開始しました。このレポートでは、新たに開発した「給与計算」「文書校正」「社内郵便物仕分」の三つのワークサンプル(以下、「新規課題」)の内容と機能について簡単に説明します。 障害の多様化に対応した職業リハビリテーション支援ツールの開発(その2)―ワークサンプル幕張版(MWS)新規課題の開発―障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門MWS新規課題の特徴 ♴MWSの概要と新規課題開発の背景♳28図1 MWS「給与計算」の課題画面※ 画面は開発中のものです

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