働く広場2019年11月号
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働く広場 2019.11医学研究や医薬が進歩する昨今、難病患者の平均寿命も延び、障害者手帳の有無や、障害者雇用枠、一般雇用枠にかかわらず、働く難病患者は増加している。難病患者の就労状況は、ここ数年で大きく変わりつつあり、継続して働く期間が延びている。私は、神奈川労働局「難病患者就職サポーター」(※1)として働いていた2013(平成25)年から2019年3月まで、1日7〜8人(1人あたり45分から1時間)、年間では千件ほど、難病患者から就労相談を受けていた。相談は年々増え、私が担当していた窓口だけでも、毎月5〜6人の難病患者が就職していた。 難病患者の障害者雇用枠における就労とは、障害認定に該当する難病患者が、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などの手帳の交付を受け、その障害程度に応じて、障害者雇用枠で働くことである。また、現時点では各種手帳の認定基準を満たしていない「移行期」の難病患者もいるため、今後、障害者手帳を取得する難病患者は一定の割合で増えることになる。また、難病の疾患群によって、それぞれ障害者手帳の取得率は異なる。例えば、神経・筋疾患、骨・関節系疾患などは、その難病患者の半分程度が取得しているが、消化器系疾患や、免疫系、内分泌系、代謝系疾患群(難病は15の疾患群に分類)は、身体障害者手帳の基準には該当しない方が大多数と思われる。このような方は、一般雇用枠で就労することになる。「難病患者は、病種が多いですよね」と、障害者支援を行う支援者との会話でよく耳にする。就業場面で共有できる言語に変換する政策としての呼称・定義づけにより難病要件が生まれるが、難病のなかにも「希少難病」という数人しか患者がいない疾しっ病ぺいから、希少の概念があてはまらない疾病種もあり、それらを合わせると世界で6千〜8千の疾病種があり、日本にも数百万人の患者がいると予想される。難病患者就職サポーターとして働いていた当時の私は、このような多様な難病患者からの相談を受けており、前出した毎月5〜6人の就職者は、さまざまな就労の形態を選択している(表1)。また、難病の疾病種の多さ、症状や病状に変動性や進行性があることなどから、その対応も多様になる(表2)。難病は多種多様で、それぞれに診断名があり、診療科、担当医がいる。難病患者が就労するにあたり、それらの情報を順を追って確認・把握していく必要がある。そうすることで、就労準備性や就労の再現性(※2)、その方の病気の一般的な特徴、個別的な特徴・症状や障害を知り、言語化し、就労上の配慮事項の整理に至る。基本的な病気の症状・状態・機能障害・変動性については、当事者の把握している情報や対処行動と、主治医からの就労の際の意見書や、診断書の情報(本人同意のもと)を参考にする。難病患者の就労の選択肢について難病患者の就労上の配慮事項を整理する就労支援ネットワークONE 代表中金竜次難病患者の雇用と就労を考える※1 難病患者就職サポーター: ハローワークの障害者の専門援助窓口に配置され、難病相談支援センターと連携しながら、 就職を希望する難病患者に対する就労支援や、在職中に難病を発症した患者の雇用継続など、 総合的な就労支援を行う者※2 就労の再現性:就労における準備をくり返したときに、一貫した結果が得られること2

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