働く広場2019年11月号
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働く広場 2019.11難病の多様性にどう向き合うか。患者との対話や、われわれの行動を問われているように思えてならない。中金竜次(なかがね りゅうじ) 就労支援ネットワークONE代表。就労支援ネットワークコーディネーター、治療と就業の両立支援サポーター。 看護士として医療現場で臨床経験を積んだ後、企業での医療相談業務に従事。その後、東京障害者職業センターにてリワーク支援にたずさわり、2013(平成25)年から2019年3月まで神奈川労働局難病患者就職サポーターとして、難病患者の就労支援、地域連携のネットワークづくり、「難病患者の地域支援体制に関する研究」班にて『健康管理と職業生活の両立 ワークブックー難病編ー』の制作・執筆にたずさわる。 2019(令和元)年6月より、「就労支援ネットワークONE」をスタート。治療と仕事の両立、難病患者・難治性疾患者の就労支援、研究・発表に取り組んでいる。https://r.goope.jp/oneone2019業務遂行の可否の判断がむずかしい場合は、疾病に付随した機能を医療機関で検査・評価する。就労以前の課題を有する、または課題の有無が不明であれば、地域障害者職業センターの職業評価・職業準備支援、就労後は、必要に応じてジョブコーチ支援を活用するなど、支援者と連携しながら対応していた。ここまで述べたなかで、「就労の再現性」をある程度想定できたものと考えるが、就労移行支援事業所や職業準備支援などで、勤務の負荷や通勤などをシミュレーションしたプログラムと、実際の勤務との間には、幾分のギャップ(実際に就労してみると、勤務での負荷が予想より高いなど)が生じることがある。そのため、就職後の定期的な面談や業務負荷の再評価、調整、実際に生じたことへの対応など、受け入れる企業側と難病患者側の両方で、今後の対応を検討する必要がある。このように、難病患者を受け入れる際は、企業と、支援機関・医療機関のそれぞれの役割を整理し、対応していくのが望ましい(図)。しかし、健康志向が叫ばれる現在でも「防げる病」と「防げない病」、「治療が見つかっている病」と「治療法開発途上の病」が、世の中には存在している。そうした「だれもが発症する可能性がある難病」と向き合う人に、きちんと向き合える社会。社会全体で難病患者の就労や雇用を考え、取り組んでいくこと。これは、障害や難病にかかわらず、「治療をしながら働く人」が今後ますます増加していく社会で、健康と治療、私私のひひひとととこ❶ 企業での障害者雇用枠による就労:身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などを取得し、身体、知的、精神障害者として、企業に就職する。企業には法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある。❷ 企業での一般雇用枠による就労:障害者手帳を取得しない、またはできないため、一般雇用枠で企業に就職。この場合も、企業は病気や障害のある本人が、健康かつ安全に能力を発揮し、その能力を公正に評価できるようにする義務がある。❸ 福祉的就労:障害者総合支援法に基づき、障害のある方が働くことを支援するサービスを利用。就労移行支援事業・就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業。❹ その他:自営・フリーランスなど。難病患者の就労の選択肢就労支援での難病患者の特徴【実践からの事例により振り返る】難病患者の配慮希望事項の整理と対応機関疾病や障害対応合理的配慮基本的な病気の症状医療機関支援機関企業通院配慮・休憩・面談・環境調整…(個別の症状・状態および機能障害など)(疾病や障害も加味)❶ 疾病種が多い。❷ 症状や病状に変動性がある患者が多い(易疲労性・痛み・痺れ・炎症などにより、見た目ではわからない辛さがある)。❸ 進行性の疾患も、そうでない疾患もある。❹ 障害者手帳を取得していない・できない方がいるため、一般雇用枠での就職者も多い。❺ 軽度~中等度、重度と、症状・状態にも幅がある。❻ 通院頻度が月に2~3回、月に1回、2カ月に1回、1年に1回程度と幅広い。❼ 一般雇用枠での正社員、フルタイム有期雇用、日数・時間数を調整した有期雇用、障害者雇用枠での就労、テレワーク、自営など、働き方は多様である。出典:『難病のある人の福祉サービス活用による就労支援シンポジウム』発表資料(難病患者の福祉サービス活用によるADL向上に関する研究・研究班、平成29年)より筆者作成出典:筆者作成出典:筆者作成対話のうえ、配慮希望事項より検討就業場面で共有できる言語に変換する表2表1図3

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