働く広場2019年11月号
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働く広場 2019.11さんは話す。一方で、オーシャンの存在を親会社に忘れられないよう小さな工夫もしている。名刺印刷業務で社員の名刺を送付するとき、一人ひとりに手書きのメッセージの「サンキューカード」を添えるのだ。「人によっては過剰だと思うかもしれませんが、私たちのホスピタリティやていねいさを感じ取り、新規の仕事を頼んできたり、わざわざ他部署の仕事まで探してくれる人も出てきました」 宮崎台事業所は、東急田園都市線の宮崎台駅から徒歩1分のビル内にある。見通しのよいフリーアドレス(固定席を持たないオフィススタイル)のデスク回りでは、パソコンと向き合う人や分厚い書類を1枚ずつ確認する人、シュレッダーされた紙を入れた大袋を運ぶ人などさまざまだ。しばらくして棚に書類を重ねていた女性が、「○○作業、終了しました」と大きな声で報告すると、あちこちから拍手とともに「お疲れさまでした!」と返ってきた。「これは私たちが『スモールステップとエンドコール』と呼んでいる作業手順です」と前山さんが教えてくれた。「以前、ADHDなどの障害のある従業員から『作業全体で自分の担当がどこかわからなくなる』、『同じ作業を続ける集中力がない』といった声がありました。そこで作業工程を細かく分けた進捗表(スモールステップ)をつくり、各工程が終わるたびに記入してチェックし、周囲にも伝える(エンドコール)ことにしました。進捗状況をみんなで共有すると同時に、本人も日々“小さな達成感”を得ながら次へ進めるようになりました」オーシャンでは、こうした職場内の工夫によって、仕事への不安を取り除き、モチベーションを維持しながら成長できるよう、うながしている。多種多様な取組みを以下に紹介する。【チャンスノート】「だれかが代表してミスをしてくれた」ととらえ、失敗の要因を分析し、改善策を含め職場全体で共有する。最近は「キッティング(※1)の読み込み作業で、違うボタンを押してデータを消してしまった」というミスについての要因を「2台同時に作業していたため、つい押してしまった」などと分析。同僚たちから集まった改善策から「物理的に押せない治じ具ぐ」を検討し、常に正しい手順で行える補助ツールの治具をつくった。【Good & More】職場内では、業務ごとにペアをつくりフィードバックを行っている。一つの工程が終わるごとに「よかったところ(Good)」3点と、「もっと伸ばせるところ(More)」1点を一緒に確認する。「ペアは時間ごと、日ごとに変えます。複数の人に長所を認めてもらうことで、自己否定の強い人でも『これが自分の強みなのだ』という自信につながっていきます」【数値記入】作業内容と、かかった時間を各自で毎回記録する。目標は決めず同僚との比較もしないが、自然と平均2倍も速くなったという。「“体重計に乗るだけでダイエット”という話と同じ仕組みかもしれません」と前山さん。【ありがとうカード】一日の報告書作成とともに、その日感謝を伝えたい同僚がいたらメッセージかけ声が飛び交うフロアシュレッダー作業。設立当初から続く業務で、この日はおよそ170kgが裁断処理された各教室から送られてきたテスト資料。用紙1枚ごとに仕分けスタンプの有無を確認する動画マニュアルの制作では、撮影、編集、ナレーションの録音も従業員が行っている各教室から引き受ける業務のなかでも、好評なのがテスト資料の分類作業だ手書きのメッセージとともに、気分転換の方法なども紹介する「サンキューカード」※1 キッティング:組立てから配線、OSのセットアップなど、コンピューターや周辺機器等を、利用者がすぐに使える状態に配備する導入作業6

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