働く広場2019年12月号
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働く広場 2019.12 2015(平成27)年に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下、「難病法」)によると、難病とは「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」と定義されています。 では、日本において、難病が広く認知されるようになったのはいつごろからでしょうか。昭和40年代に入ってから、国会で難病に関する審議が行われ、1972(昭和47)年には難病対策要綱が策定されました。この要綱では、難病に対する対策の進め方として、①調査研究の推進、②医療施設の整備、③医療費の自己負担の解消の三つが挙げられました。こうして難病の病因・病態の解明研究および診療整備のみならず、難病に対する医療費の公費負担を目ざすようになった経緯があります。 現在、難病対策要綱が策定されてから約半世紀の歳月を経て、難病研究は進展したものの、同時に研究対象とする病気の数は徐々に増加しています。今日でも数百の病気に関する疾患概念の確立や、治療法の開発などの研究が進められています。そして、完治はしないものの、適切な治療や自己管理を続けることで、普通に生活し、就労が可能な難病患者が増加しています。そのため、「病気を抱えながら働く(働き続ける)」ことが今後の大きな課題になっています。 難病法の規定により、厚生労働大臣が定めるものを「指定難病」といい、医療費助成の対象となります。申請に必要な臨床調査個人票は、都道府県知事や政令指定都市の長が定めた難病指定医のみが記載することができます(更新手続きの場合は協力難病指定医も記載できます)。大学病院などには難病指定医がおり、難病患者を受け入れるための体制が整えられています。難病は、「完治」がむずかしくても「寛かん解かい」に向けた治療を行ったり、症状の抑制や進行を緩和するための治療も施されています。そのため、症状の安定期においても、 症状の悪化を予防するための服薬や自己注射など、日々の自己管理が不可欠となります。 また、睡眠や食事、服薬などによる体調管理と、検査や治療のために定期的な通院が必要なほか、体調に応じた早めの医療機関の受診も重要になります。 多くの難病に共通する主な症状に「全身的な体調の崩れやすさ」があります。全身的な疲労や倦怠感、痛み、発熱、集中力の低下など、当初は外見だけでは判断しづらい症状として現れます。これらの症状は、休憩や休暇による疲労回復、早期の通院・治療の必要性の目安となります。そのほかにも難病には、疾病に応じてさまざまな症状があります。症状の経過や疾病の進行にともない、ときには障害が残る場合もあります。また治療によっては、顔のむくみや免疫力の低下、全身の倦怠感が生じるなど、副作用が現れる場合もあります。 現在、難病と呼ばれる疾病の数は300以上あります。そのなかでも、就労世代に多い難病として、①消化器系の難病(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、②免疫系の難病(全身性エリテマトーデスなど)、③神経系の難病(若年性パーキンソン病など)などが挙げら難病のある人と就労難病とは、どのような疾しっ病ぺいなのか難病に関する制度・診断についてVol.1難病への理解と配慮事項 今回から4回にわたり、「難病のある人と就労」をテーマに、「北九州市難病相談支援センター」難病支援担当で保健師の河かわ津つ博ひろ美みさんの監修のもと、難病のある人が就労するために必要な、難病への理解と配慮すべき点について紹介していきます。第1回目の今回は概要として、「難病の定義や代表的な難病」についてまとめました。共通する症状と代表的な難病の種類10

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