働く広場2019年12月号
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用意する、学校外・地域から作業を受注するなどの工夫により、生徒の学びが深く広いものになりつつある。また、卒業生を雇用している事業所2社を見学し、雇用側の人材育成と定着支援に向けたきめ細かな取組みに障害者雇用に対する理解と広がりを感じた。これらの生徒・卒業生の学びをつないでいる進路担当者や管理職をはじめとする先生方の役割の大切さについても、改めて考えさせられた。案内していただいた竹内先生、藤本先生、安東先生らの、生徒の生活や学びの経過をふまえた支援が、卒業後の企業の人材育成を支えるものとなっている。日ごろから地域とつながり、企業・事業所と顔の見える関係をつくっているからこそ、できることであろう。濵田さんは「手洗いや身支度など、衛生管理について学んでいます」。川渕さんは「お客さまがうれしそうにしていることが楽しい」とのこと。菓子製造や包装などの作業場が、客席から見える場所にあることが、生徒の顧客意識から品質意識へとつながる環境を整えているように思う。卒業生には、在校中にアビリンピック高知大会の「喫茶サービス」で金賞を受賞し、全国大会に出場した人もいる。開店して5周年を迎える今年は、セット販売や宅配便で発送する注文も受けるようになった。地域のみなさんの家へのポスティングによるPRも行っており、生徒の学びが広がってきている。特別支援学校3校を見学し、職業教育の内容に広がりと深まりを感じた。地域の企業や関係機関の助言を受けて、先生方の研修も行っている。外部専門家が生徒に直接教える機会を設ける、オープンキッチンを取り入れたカフェや実習室を社会的自立、自己実現であり、学年に応じた作業、現場実習をしている。このお店は学校内にあり、食品製造分野での就労がむずかしいなか、生徒が製品の品質や接客を学べる場として、地域のお客さまの認めるものをつくることを目標としてきた。お菓子づくりは本場ドイツのマイスター(※2)で松山市在住のエンゲルハート先生から、年に2回研修を受けている。エンゲルハート先生は製菓・製パンマイスターであり、新商品を販売する際は、先生が試食し、許可が出ないと商品にはならない。プロが認めたものしか販売していないのだ。これらの教育実践は、高知大学の高知発達障害研究プロジェクト(2008~2015年)の「職業教育課程研究」がきっかけであり、賞味期限が長いドイツ菓子の製造・販売の店をオープンすると決めた際に、エンゲルハート先生につながったそうである。さらには、小学部のときからお店で食事をしたり、隣にある給食室に配膳の当番で来たときにお店を見るなど、高等部生徒の作業の様子をたびたび目にすることで、児童生徒が日ごろから「働くこと」を学べる環境となっている。お店で働く高等部2年生の濵はま田だ慶けい次じ朗ろうさん、川かわ渕ぶち由ゆ香かさんの2人に聞いてみた。おわりに働く広場 2019.12高知大学教育学部附属特別支援学校同校内にある「hocco sweets」校長の蒲生啓司先生(左)の案内で、ドイツ菓子とコーヒーをいただく※2 マイスター:ドイツにおける高等職業能力資格認定制度の有資格者であるスペシャリスト25

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