働く広場2019年12月号
30/36

働く広場 2019.12 取組みを実施した地域は全国4カ所のハローワーク管轄区域(以下、「調査地域」)でした。これらの地域において「研修講座」、「パネルディスカッション」、「グループワーク」、「フォローアップ」、「助言者の設置」という五つの取組みを実施しました。 「研修講座」は、マニュアルに掲載した視点やノウハウに関する説明を中心に行いました。講座は「就労支援機関と精神科医療機関の情報共有・連携の必要性」、「情報共有・連携の前提」、「情報共有・連携の課題」、「効率的な情報共有・連携を行うために支援機関が留意すべきこと」、「情報を共有するためのツールの有効活用」などの話題から構成しました。  「パネルディスカッション」では、調査地域に所在する支援機関や医療機関の職員などから選定したパネリストに、情報共有・連携の現状や工夫していることなどについて発表していただきました。発表終了後には、パネリスト間およびほかの参加者との間で質疑応答を行いました。 「グループワーク」では、5~6人のグループごとに、地域の現状や課題、課題を克服するための地域における行動計画などについて討議を行いました。医療機関の敷居を高く感じる支援機関の職員が多いことをふまえて、各グループは支援機関と医療機関の双方の職員により構成しました。また、グループでの討議内容を参加者全員で共有するため、全体討議も行いました。 「フォローアップ」は、グループワークが終了した約3カ月後と約1年後の計2回実施しました。そこでは、各地域における情報共有・連携の状況や変化、グループワークで話し合われた行動計画の実施状況、行動計画が十分に実施さ 精神障害や発達障害のある人たちのなかには精神科医療機関(以下、「医療機関」)を利用している人がいます。医療機関と就労支援機関(以下、「支援機関」)の両機関を利用する人たちに対しては、支援機関の職員は医療機関の職員と支援対象者(以下、「対象者」)に関する情報を共有・連携して支援に当たることが大切です。医療に関する情報は、支援機関の職員が対象者の心身の状態に配慮した支援を実施することに役立ちます。一方、就労支援に関する情報は、医療機関の職員が対象者の生活・就労の状況を把握することに役立ち、適切な治療を可能にします。 そこで、当研究部門では、支援機関と医療機関が効果的に情報共有・連携を行うために必要な視点やノウハウを収集し整理した結果を「就労支援と精神科医療の情報交換マニュアル」(以下、「マニュアル」)(※2)としてまとめ、2017(平成29)年に上じょう梓ししました。とはいえ、このようなマニュアルを関係機関に配布するだけで、はたして医療機関と支援機関の情報共有・連携が円滑に進むようになるのでしょうか。マニュアルで示すことができるのは原則論に過ぎず、地域の状況に即した具体的な情報共有・連携の在り方については各地域の支援機関と医療機関の対話に基づいて検討することが必要ではないでしょうか。 このような問題意識のもと、2017年度から2018年度にかけて、マニュアルに示した視点やノウハウを普及する取組みを複数の地域で実施することで、支援機関と医療機関の情報共有・連携をうながすことができるかについて検証を行いました。 これと並行して、障害のある人が自分の状況を見える化し、その情報を関係者(例えば、職場の管理者)と共有することで本人と関係者のコミュニケーションを円滑にするとともに、適切なセルフケアやラインケア、外部の専門的なケアにつなげて、安定した職業生活の継続を支える「情報共有シート」の開発にも取り組みました。 それではまず、情報共有に関する視点やノウハウを普及する取組みによって「取組みを実施した地域の情報共有・連携の状況が変わったのか」について調べた調査結果について紹介します。効果的な就労支援のための就労支援機関と精神科医療機関等の情報共有に関する研究障害者職業総合センター研究部門 障害者支援部門※1 本研究「調査研究報告書No.146」は、http://www.nivr.jeed.or.jp/research/report/houkoku/houkoku146.html よりダウンロードできます※2 http://www.nivr.jeed.or.jp/research/kyouzai/kyouzai55.html よりダウンロードできます情報共有に関する視点やノウハウを普及する取組みで地域の情報共有・連携は変わったのか?♴研究の趣旨♳28(※1)

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る