働く広場2019年12月号
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働く広場 2019.12れていない場合は、実施されるための対策について参加者間で話し合いました。 「助言者の設置」は、支援機関の職員は医療機関の仕組みや事情に詳しくない、反対に医療機関の職員は支援機関の仕組みや事情に詳しくないといった背景を考慮した取組みです。具体的には、連携を進める際に不明なことがあった場合などに相談・助言する者を、調査地域内に所在する支援機関と医療機関の双方から選び、研究参加者が相談できる窓口を設けました。 それでは、以上の取組みを実施することで地域の情報共有・連携に変化はあったのでしょうか。図1は、支援機関の職員が取組みに参加する前と後で医療機関との情報共有や連携に関する行動を実施する頻度(以下、「実施頻度」)がどのくらい変わったのかを示したものです。図るための対処や工夫の状況をチェックする欄」などを組み合わせ1日1行程度記入するものです(例は図2)。どの欄でシートを構成し、どのような状態・行動をチェックするかなどは、基本的に本人が決め、本人が決められない場合にのみ支援者が助言します。また、状況や目的により情報共有すべき内容は変わるため、シートを更新する必要もあります。 シートを利用した支援者を対象にした調査では「支援者が本人のセルフケアを意識して支援するようになった」、「本人が必要な対処行動をとれるようになった」などの効果が報告されています。シートの作成・活用方法などは「情報共有シート活用の手引」(※3)にまとめていますので、ご興味のある方はぜひ手引をご覧いただき、ご活用ください。には「対象者本人からの同意取得」、「文書等による事前連絡」、「問題発生時の協議」という3種類の行動についての実施頻度を取組みの参加前後に測定した結果を示しています。図中の●は職員間の実施頻度の平均を示しており、その上下につけられた棒は職員間における実施頻度のばらつきの程度を表しています。いずれの行動についても、取組みの参加後の実施頻度は参加前よりも高くなっていることが分かります。このように本研究で実施した取組みは情報共有に関する行動をうながすことができる可能性が示されました。本研究で実施した取組みを参考に、地域事情に精通した関係者や地域のネットワークづくりを主導する機関が中心となって、就労支援機関と精神科医療機関の支援ネットワークが形成されることが期待されます。  次に、本研究で開発した情報共有シートについて紹介します。このシートは、障害のある人が自分の状況について自らチェック(見える化)し、その情報を支援者や職場の人と一緒に確認することで、コミュニケーションを円滑にし、適切なセルフケアやラインケア、支援機関や医療機関の対応につなげることを目的としています。主たる利用者として、「自身の体調変化に気づけず、体調が悪化し仕事に影響が出る人」や「悩んでいても周囲の人からは元気にやっていると思われがちで、自分の思いを伝えにくい人」を想定しています。 本シートは「生活面:睡眠、食事、服薬、その他の日常生活面をチェックする欄」、「心身の状況:体調や意欲、疲労などの心身の状況をチェックする欄」、「対処・工夫: 体調を維持す※3 http://www.nivr.jeed.or.jp/research/kyouzai/kyouzai60.html よりダウンロードできます◇ お問合せ先:研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.or.jp) 就労継続を支える情報共有シート329図1 取組みへの参加による支援機関の職員の行動の変化医療機関との情報交換の際、必要性を本人に説明し、本人の同意を取得(%)医療機関に問合せをする際、相談経過・確認事項を事前に文書等で伝達問題が発生した際、医療機関と協議100806040200参加前  参加後参加前  参加後参加前  参加後食事・服薬⇒した場合:○ 抜けた(忘れた)場合:レ 心身の状況⇒非常に良好:5~非常に不良:1対処・工夫⇒非常に良くできた:5~全くできなかった:1 相談ごと・困りごと⇒ない:○  ある:レ図2 情報共有シートの例日にち生活面心身の状況対処・工夫相談ごと 困りごと確認者のサイン食事服薬体調意欲ストレッチ水分補給4月1日22:00ー6:00◯◯◯◯◯◯4423◯レ4月2日22:30ー6:10◯◯◯◯◯◯4323◯レ4月3日22:00ー5:50◯◯◯◯◯◯3323◯レ4月4日23:00ー6:00レ◯◯レ◯◯2122レレ4月5日22:00ー6:20◯◯◯◯◯◯3243◯レ4月6日23:00ー7:00レ◯◯◯◯◯3312◯レ4月7日22:30ー7:15レ◯◯◯◯◯3312◯レ就寝時間起床時間

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