働く広場2019年12月号
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働く広場 2019.12――デザインを中心にした就労移行支援事業所などを運営されていますが、設立のきっかけを教えてください。 私は大学卒業後、大手通信販売会社に入社し、テレビ制作部でCMなどをつくっていました。充実した仕事でしたが体を壊してしまい退職。働き方を見直して、26歳のときに企画制作会社をつくりました。イベントなどを手がけるなかで、佐世保市のNPO法人から「引きこもりの若者の、社会復帰プログラムをやりたい」と相談され、運営にかかわりました。 そのときに初めて、当事者の多くに精神障害があることを知りました。半年間の訓練でパソコンスキルなどを身につけ資格を取る人もいましたが、就職せずに再び引きこもる人が続出。障害特性に対する理解が得られないため、社会になじめずにいたようでした。当時は若者が訓練を受けたくなるような就労系障害福祉サービス事業所も少なく、「じゃあ自分たちでやろう」と就労移行支援事業所「ホットライフ」を立ち上げました。――ホットライフの事業はどのようなものですか。 パソコンとデザインを中心にした技術指導を行い、職場に通うのがむずかしい人は独立できるよう、私たちが仕事を発注する形を目ざしました。絵やデザインが苦手な人は、興味のあるモノづくりやパソコン操作、検品や納品管理など幅広い作業にチームで取り組みます。 あるとき20代の女性が、地元特産の牡カ蠣キをモチーフにした絵をノートに描いていました。のちに地元のフリーペーパーが表紙に使ってくれるほどポップなデザインだったので、それをデータ化し、インクジェットプリンターで布に印刷。裁縫が得意な人がポーチにしてみたら、とても可愛く仕上がりました。そこから「デザインの広がりの可能性」を感じ、商業化を視野に就労継続支援B型事業所「佐世保布小物製作所」を設立しました。 デザインをテキスタイル(布地)に変えると商品化の幅が一気に広がります。布小物などを地元の東急ハンズや、大阪と福岡の百貨店などに置いてもらっていますが「障害者のデザイン」などと強調せず、純粋に商品として扱ってくれます。クリエイターである利用者にとっても、一般の店舗に自分の商品が並ぶことは大きなモチベーションになりますよね。――取引先などは、どのように広げていったのでしょうか。 私たちは、商品のオリジナリティーを出すためにも、地域に暮らすクリエイターたちの感性でその土地の魅力を発信することを目ざしました。そこで手がけたのがお土産用の雑貨です。九く十じゅう九く島しまや赤レンガ倉庫などをテーマにしたカードケースやハンカチ、コースター、バッグな※1 リブランディング:既存のブランドのデザインやサービスなどを見直し、より効果を発揮するブランドへ再構築すること福祉業界はクリエイティブな発想で株式会社フォーオールプロダクト 代表取締役 石丸徹郎さんいしまる てつろう 1981(昭和56)年、長崎県佐世保市生まれ。2003(平成15)年、長崎大学経済学部卒業。メディア業界などを経て企画制作会社設立。2012年、30歳で就労移行支援事業所「ホットライフ」を開設。これまで長崎県内に就労支援を目的とした「株式会社フォーオールプロダクト」(https://www.for-all-product.com/)、「一般社団法人stand rm(スタンドファーム)」(https://stand- rm.storeinfo.jp/)のほか、福祉プロダクトのリブランディング(※1)に取り組む「株式会社and.basic(アンドベーシック)」(https://and-basic.amebaownd.com/)などを設立。きっかけは﹁引きこもり支援﹂2

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