働く広場2020年1月号
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働く広場 2020.1面接を通過したら、トライアル雇用期間(3〜6カ月)を経て9割ほどが採用され正社員になっている。 さっそく職場を見学させてもらった。広いワンフロアにすべての課があり、端から端まで見通せる解放的な空間だ。案内をしてくれた総務課長で、企業在籍型ジョブコーチの下しも村むら和かず史ふみさんは、「社員の声を拾いながら、ハードとソフトの両面から職場環境の改善を進めてきました」と話す。ここ数年は、大幅に増えた精神障害や発達障害のある社員たちが働きやすいよう工夫を重ねたそうだ。その一つが休憩場所。空いていた裏庭を整備してウッドデッキをつくり、ベンチやパラソルつきのテーブルなどを配置した。背景には緑が広がっており、気分をリフレッシュできると好評だ。社内の休憩室には、一つひとつ独立したテーブルとイスを置いて「おひとりさまスペース」を追加した。「以前から休憩時間になるとトイレの個室が満室になるなど『一人になる空間』を望む社員が少なくないことに気づき、他社の事例も参考につくりました」また業務の進め方の工夫として、資料の取扱いの際の混乱を防ぐため、仕分けボックスやラベル、インデックス、書式別の紙などを、パッと見てわかりやすいよう“色分け”している。あいまいな表現を極力なくした指示書や、イラストなどでわかりやすく説明した手順書、作業ごとに完結した箇条書きのチェックシートなどもつくった。聴覚障害のある社員のための職場環境も、ソフトウェアの発達とともに充実してきたそうだ。筆談用の電子メモパッドをはじめ、朝礼などで使われる自動の音声変換入力、チーム内の連絡確認向けのチャットツールの活用が習慣化している。下村さんは、「ツールを駆使することで、手話ができなくてもコミュニケーションに困ることがほとんどなくなってきていると感じます。特に音声変換ツールは、会議や打合せで非常に役立っています。以前は用意したレジュメ以上の内容を、その場で把握するのはむずかしいようでしたが、いまでは話合いにも参加できるようになっています」と説明する。フロアには、非常時を光の点滅で知らせるフラッシュライトを完備。さらに大型モニターが3台設置され、拡大文字や映像で社内用のお知らせを流している。「明日は一斉清掃日です」、「今日は○○社ハード・ソフト両面で職場改善社員の憩いの場となっているウッドデッキ総務課長で企業在籍型ジョブコーチの下村和史さん休憩室の窓辺に設けられた「おひとりさまスペース」インデックスで整理された資料が収められた仕分けボックス社内は段差のない、広々としたワンフロア。車いすユーザーもスムーズに移動しやすい8

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