働く広場2020年1月号
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働く広場 2020.1 大人になって発達障害の診断を受け、九州地理情報に転職した後、仕事の能力をいかんなく発揮している社員もいる。2017年に中途採用で入社した箱はこ田た康こう輔すけさん(40歳)は、もともと東京でIT関連の会社に一般雇用枠で勤めていた。ユーザーとのヒアリングから設計、インフラ構築、納品までを手がけるなど仕事は問題なくこなしていたが「勤務時間中に、やたらと眠くなる」のが悩みだったそうだ。会議中に話しながらガクッと寝落ちすることもあったという。休職し地元の福岡に戻って病院に行ったところ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された。「ふり返ると、極端な『先延ばしの癖』があったのも特性の一つだとわかりました。好きなことはぶっちぎりでやり通すのですが、好きじゃないことはどうしても手をつけられませんでした」薬を服用しながら体調を回復させ、障害者手帳を取得して九州地理情報に入社。システムサポート課で、グループ会社からのITに関する問合せなどに対応している。薬の服用により睡眠障害が改善し、急な眠気もなくなったことで、以前は避けていた業務にも意欲的に取り組めるようになった。「診断を受けたとき、自分の特性を知り、何が苦手で、どう対処すべきかなどを客観的に確認できたことが、よかったと思います。『自分が先送りしたがる癖は、こういうことだったのか』と納得したことで、日ごろの自分の行動や仕事との向き合い方も意識的に変えていけるようになりました」箱田さんは入社から1年で主任に昇格した。社内には障害のある社員のなかに課長2人、主任5人、作業リーダー6人がいる。 三舛さんは社長として、一般企業と同じように利益追求につながる事業拡大に注力してきた。それが障害者の雇用拡大につながる一番の近道だからだ。「もともと第三セクター方式のよさを活かして、自治体や出資企業からの仕事を請け負ってきましたが、出資した各企業でも障害者雇用を進めていたため、業務内容が被かぶり、請け負う仕事が減ってしまうケースが出てきました。一方で、ワールドHDには数多くの関連会社があるため、『グループ内でのシステム運用保守』といった新たな業務をつくり出すことができています。いまでは『システム構築』など複雑な業務についても、外部の専門職スタッフらとともに取り組むなど、業務の幅が広がりました。請け負う内容に見合うように仕事の質を高めながら、雇用拡大につなげていくつもりです」今後も事業と採用の拡大を図っていくうえで、視野に入れているのはテレワークだ。福岡県が2018年度に設置した「テレワークによる障がい者雇用促進検討会議」でも、三舛さんは民間企業代表として委員を務めた。「テレワークには“在宅型”や“サテライト型”などがありますが、私たちはこのテレワーク機能を活かして、障害者の多様な勤務形態を実現していけたらと思います。社員の高齢化なども見すえ、さまざまな働き方改革にもつなげていけるのではないかと考えています」実際に今年度から在宅テレワークのモデル企業4社の一つに選出され、動き出しているところだという。これまでの実績や経験を活かした新たな取組みに、周囲の期待も集まっている。三舛さんはいう。「将来的には、地元のほかの大企業だけでなく、中小企業も含めて連携しながら進めていくこともできるかもしれません。いまも私たちの会社を参考にしたいという企業の方がいたら、ぜひ気軽に見にきてください。いつでも大歓迎です」1年で主任にキャリアアップテレワークのモデル事業もシステムサポート課で主任を務める箱田康輔さん11

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