働く広場2020年1月号
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働く広場 2020.1る場合や、通常の栄養摂取が困難になった場合は、障害認定される場合もありますが、最近では多くの場合、内科治療により症状を抑えることができます。寛かん解かい(※)状態にまで回復することもありますが、症状が変動しやすいこともあり、突然の腹痛などに対応できるように、トイレに行きやすいデスクワークや専門職を仕事として選ぶ方が多いようです。また、腸からの栄養吸収の不足を補い、腸の炎症を抑えるために、仕事中に栄養剤を飲むことがあります。食事も消化のよいメニューを選びます。そのほか、事業者による配慮(後述)があれば、病気のことをあまり意識せず、仕事に集中できるようです。  では、実際の就労状況はどうなのでしょうか。クローン病の方の就労した事例について、今回のテーマの監修者である河津博美さんにうかがいました。 「当センターで相談を受けた方のなかに、クローン病の30代の男性がいます。消化器系の難病の場合、力仕事よりデスクワークが適していますが、この男性は、病院内にあるデイサービスで介入院中は病棟で勉強ができたり、試験を受けられるなどの環境を、先生方が整えてくださったようで、国家資格を取ることができたそうです。その後は病院で働くことで、山田さんにとって、配慮を得やすい状況が整ったと思います。医療関係の学校や職場は、やはり理解されやすいように感じます」  事業者側が配慮すべき点や注意点に護士の仕事に就いています。介護の仕事ですので、高齢者の方の入浴の介助など、体力を使う仕事もあるようですが、業務をこなしているようです。病院には看護師さんがいますし、雇用主は院長先生になるので、病気に対し配慮が行き届いていると聞いています。体調が悪いときには休めて、定期受診日にもしっかりと休暇を取得することができます。この男性は、決まった時間に栄養剤を飲んでいますが、勤務時間中にも服薬しやすい環境だと聞いています。このように病気に対する理解のある職場だと、難病の方でも安心して働くことができます」 さらにもう一人、別のクローン病の方の就労事例についてもお話を聞きました。 「40代の女性、山やま田だ貴き代よ加かさんは、10代で発症しました。体調が悪いなか、努力して学校を卒業し、看護学校に入学。国家資格を取り、卒業後は看護師になりました。しかし、自身の体調を考え『看護師は厳しい』と判断し、現在は病院で医療事務の補助の仕事をされています。山田さんの場合、看護師になるまで病院付属の看護学校に通っていたため、学校でも配慮を得られました。クローン病の方の就労事例事業者側が配慮すべき点や注意点ついてもお聞きしました。 「難病の方の仕事ぶりを見て、きっちり仕事ができると『もっとできるのでは?』と思ってしまうことがあります。そのため、事業所側は仕事を増やしてしまい、本人も期待に応えようと無意識のうちに無理を重ね、体調を崩してしまう場合があります。この点は、就労する本人の自覚と、事業者側の理解の両方が重要です」と河津さんは指摘します。 さらに日常的な注意点としては、消化器系の難病の方は頻繁にトイレに行く場合があるので、トイレに近い席にしたり、トイレに立つのが目立たない席や配置にするなどの配慮が必要です。また、ウォシュレットなどの設備が整っているとよいでしょう。このように、仕事量を一定以上は増やさないこと、職場における席の配置やトイレの整備など、配慮すべき点をクリアしていけば、消化器系の難病のある方もより働きやすく、業務に集中しやすい職場環境を整えることができます。それにより、難病のある方も社内研修への参加、資格取得へのチャレンジなど、キャリアアップの機会が広げられるようになります。※ 寛解:病気の症状が一時的あるいは永続的に軽減、または消失すること独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院の医事課に勤務する山田貴代加さん27

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