働く広場2020年1月号
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働く広場 2020.1JR博多駅から25分ほど乗り継いだJR舞まい松まつ原ばら駅の周辺に広がるベッドタウン。建ち並ぶ一戸建住宅のなかに、「株式会社ワールドホールディングスグループ」(以下、「ワールドHD」)の特例子会社「九州地理情報株式会社」の平屋建て社屋がある。九州地理情報は1990(平成2)年、福岡県内で初めての第三セクター(※1)方式による重度障害者多数雇用企業として設立された。出資元には福岡県や福岡市のほか九州電力、西日本銀行(現・西日本シティ銀行)、福岡銀行、西部ガス、NTT西日本といった大企業が名をつらねた。経営母体は地元の総合建設コンサルタント会社だったが、2008年に人材教育事業や不動産事業、情報通信事業などを手がけるワールドHDへと移った。5年前から九州地理情報の代表取締役社長を務め、ワールドHDの経営政策本部長でもある三み舛ます善よし彦ひこさんは、西日本シティ銀行からの転籍組だ。行員時代から九州地理情報とかかわってきたという。「ワールドHDの伊い井い田だ栄えい吉きち代表取締役会長兼社長は、より多くの人々に生活を営むための環境と多様な働く場所を提供し『人が活きるカタチ』を創造する、との社会的使命を掲げています。これは九州地理情報のシンボルマーク『WITH』が象徴するように、『より多くの障害者が健常者とともに同じように働ける職場をつくる』との経営理念にも通じるということで、スムーズに引き継がれました」設立時に11人だった障害のある社員は30年間で5倍の55人になり、全社員(89人)の6割を占める(2019〈令和元〉年10月1日現在)。55人の内訳は身体障害23人(肢体不自由10人、聴覚障害9人、内部障害3人、言語障害1人)、知的障害4人、精神障害28人(うち発達障害14人)。総務部と営業課を除く2部5課に、それぞれ障害のある社員が3〜22人配属されていることから、障害者職業生活相談員16人、企業在籍型ジョブコーチ4人がいて各課に配属されている。ワールドHDの傘下に入ってからはグループ会社の規模に応じて社員数も増え、時代の流れに沿って精神障害のある社員の割合も高くなった。業務内容も、もともとの地理情報システム事業だけでなく、ワールドHDグループをサポートする幅広い事業が加わった。総務部長を務め、障害者職業生活相談員の濵はま口ぐち茂しげ春はるさんが説明する。「例えば、ワールドHDの人材派遣事業で大量に扱う契約書などの電子化、グループ社内の基幹システムの構築支援から運用保守、パソコンのキッティング(※2)などです。業務の間口が広がることで、採用時のスキル条件もゆるやかになりました」採用は主にハローワークを通して行っている。一般常識と作文の筆記試験、適性検査、タイピングテストも行うが、重要視しているのは1次と2次の面接だそうだ。「1次面接では一人あたり1時間ほどかけます。いろんな話をしながら、みんなと一緒に働いていけそうな方であるかを見ます。通常の入社面接と同様ですね」第三セクター方式による重度障害者多数雇用企業※1 第三セクター:国や地方公共団体と民間が合同で出資・経営する企業※2 キッティング:OS のセットアップや必要なソフトのインストール、ネットワーク接続など、コンピューターを利用者がすぐに使える状態にする導入作業平屋建てのオープンスペースに多様な工夫と配慮だれの指示を受け、だれに相談するのか、「連絡体制」を明確に日誌や面談をベースに、一人ひとりに合わせた働き方をうながす123代表取締役社長の三舛善彦さん総務部長で障害者職業生活相談員の濵口茂春さん1POINT7

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