働く広場2020年2月号
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働く広場 2020.2――有村さんは、﹁トヨタループス株式会社﹂︵以下、﹁ループス﹂︶の立上げ時からかかわっています。当時の経緯から教えてください。 それまでトヨタ本社で進めてきた障害者雇用は、自動車産業の特徴でもありますが、聴覚障害のある方に偏っていました。時代とともに幅広い雇用の必要性が社内外で高まるなか、特例子会社が検討されました。トヨタ本社の広範な部署に配属するのは人事管理上の課題も多く、ある程度集約した職場のほうが環境を整えられるだろうとの考えでした。 ループスの業務は、本社総務部で担当していた印刷と社内便の二つをアウトソーシングする形でスタートさせました。もともと2業務を担当していた社員約50人に出向してもらい、身体障害と知的障害のある方を計28人採用しました。その後は新規採用に合わせ、出向社員を本社の別部署に戻していきました。 さらにオフィスサポート業務や名古屋・東京圏内の事業所への拡大も進め、いまでは全社員373人、うち障害のある社員は286人︵身体障害108人、知的障害108人、精神障害70人、2019〈令和元﹀年11月現在︶まで増えました。――職場環境を整えるために、入念に準備されたそうですね。 社屋については設計段階から「ユニバーサルデザイン研究会」をつくり1年間かけて検討し、駐車スペースからエレベーター、トイレ、休憩スペース、表示板の色、緊急呼び出し機能を持たせた社員証まで、さまざまな配慮や工夫を実現させました。 ソフト面では、定着支援員として、地元の障害者支援施設から一名を2年間、さらに別の就労移行支援事業所からも一名を1年間、それぞれ出向扱いで来てもらい、障害のある社員への接し方など具体的な支援方法を、職場で実践的に教わりました。同時に、私たち企業側が求める人材について支援者側に知ってもらえるよい機会にもなりました。いまは複数の就労移行支援事業所と連携しながら、採用や定着支援に結びつけています。 企業が障害者雇用に取り組むうえで、やはり地域のつながりは大切だと思いますね。私は社長就任後に豊田市地域自立支援協議会の委員になった縁もあり、障害者雇用を希望する地元企業や就労移行支援事業所などに声をかけ、ループスに定期的に集まって情報交換をしています。豊田市と協力し、35カ所の事業所の活動内容や場所をわかりやすく示したマップも作成しました。特別支援学校などから採用するときは、トヨタの企業文化とともにトヨタループス株式会社 取締役社長有村秀一さんありむら しゅういち 1959(昭和34)年生まれ。1982年トヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車株式会社)入社、技術部門で車両開発にたずさわる。1997年から異業種合同ブランド「WiLL」の立ち上げや、トヨタ自動車名古屋オフィスがある「ミッドランドスクエア」(2006年竣工)の建築プロジェクトなどに参加。2008年にトヨタループス株式会社の常務取締役、2014年から取締役社長。「一般社団法人障害者雇用企業支援協会」理事。地域とのつながりを大切に14

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