働く広場2020年2月号
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働く広場 2020.2就職後も支援を受けられるよう、いずれかの事業所に登録してもらうようにしています。――社員数の多い職場ですが、心がけていることはありますか。 日ごろから少しでも早く本人の変化に気づくことが大事だと感じています。例えば、社員たちには毎朝、職場の壁に貼ってある紙にその日の体調を「〇×△式」で記入してもらっていますが、把握しきれない部分もあります。管理者が常に現場を巡回しながら、声のトーンや表情が「いつもと違う」といった様子を見て声がけすることで、うまくフォローできた事例もあります。ループスでは臨床心理士、保健師、精神保健福祉士、社会福祉士、精神科医らがチームで定着支援にかかわってくれています。 それでも現在、休職者は10数人います。精神障害にかぎらず、身体障害のある方でも心身の不調をきたすことはありますよね。定期的に支援員が連絡をとってフォローし、復職は時短勤務を含めて柔軟に対応して、場合によっては配属も変えます。ループスでは、勤続5年目以降の休職期間の上限を2年間としています。 一方で、社員育成やキャリア形成についてはトヨタ本社に合わせています。本社で行う職層別の研修などに一緒に参加し、いろんな社員と交流しながら、トヨタの企業文化を吸収してもらっています。トヨタの一員としての自覚が持てるようになり、仕事のモチベーションアップにもつながっているのではないでしょうか。 近年は、トヨタの福祉車両の開発や評価部門にループスの社員が参加し、当事者目線を活かして力を発揮してくれています。また、本社の職層研修に「心のバリアフリー教育」を導入し、研修ではループス社員が講師役を務めています。ループスの認知度も上がり、本社側から新規業務を依頼されるケースが出てきたのも喜ばしい影響です。――アビリンピックにも、多くの選手を送り出していますね。 もともとトヨタ本社が技能五輪に出場していたので「同じように全国を目ざせるといいね」と、2011年ごろから挑戦し始めました。最初は製品パッキング、翌年にはオフィスアシスタントも加わり、2016年には全国大会で初の金賞受賞者が出ました。選手の活躍で周囲も刺激を受けて挑戦者が増え、今大会は3種目で4人が全国大会に出場しました。職場では練習用パソコンを置いたり、練習時間を設けたりもしています。アビリンピックに挑戦することで仕事への意欲が上がるだけでなく、日ごろの作業のやり方などが客観的に評価されてわかりやすくフィードバックできる効果もあるようです。――今後のループスの展望、障害者雇用の課題などについて考えをお聞かせください。 かつてトヨタ本社で採用してきた社員が軒並み高齢化し、毎年80人ぐらいが定年を迎えています。これは日本の大企業に共通する課題ですね。ループスではこの10年で障害者雇用の人数を大幅に増やしてきましたが、さらなる事業拡大は必須です。業務量の増大はもちろん、社員の多様性に考慮し、「障害のある人でもできる仕事」というくくりから、「この人だからこそできる仕事」という視点への広がりも必要だと考えています。社員一人ひとりの「これができる」という能力を発掘し、トヨタグループのなかで活かしていけるような職場環境もつくっていきたいですね。 国内全体の障害者雇用については、大企業と中小企業との雇用率の格差が開いています。個人的には、中小企業で障害者を雇用するための支援方法などを、もっと検討したほうがよいのではと思います。何かのきっかけで「最初の一歩」をふみ出せれば、「なんだ、結構いけるんじゃないか」と進めていけるはずです。また、障害者雇用にかかわる企業の多くは「うちでやっていることを、どんどんマネしていいよ」という姿勢で情報を開示してくれます。これから障害者雇用を始めようという方は、臆せず多くの企業を見学してください。もちろんループスも大歓迎です。トヨタ本社の社員との交流15

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