働く広場2020年2月号
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培にも取り組んだ。2012(平成24)年には化粧品製造販売許可も取り、営業に駆けずり回る日々だったが、黒字化には程遠く、経営的には苦しい時期が続いた。この厳しい3年間を支えたのは、自分たち2人を信じて熱心に製造に取り組み、ついて来てくれる社員たちの笑顔であった。現状を打開するために長野県の石鹸の師匠のところに行き、他社では決してまねのできない商品づくりの模索を続けた。創業当時から毎月売上目標を立て、社員と一緒になって売上目標達成に尽力してきた。一人ひとりが自分の仕事に責任を持ち、商品の品質管理と納期に間に合わせなければならない。「できない」のではなく、「どうしたらできるか」を社員と話し合った。そのために、本気で叱り、本気で褒めてきた。その積み重ねが実り、6年目に黒字化することができた。社員の製造技術はどんどん進化していく。業務の中心をそれまでの他社の製造委託から、自社製品メインに切り替えるために、2016年には自社ブランド「lリィリィi'ili'i」を立ち上げた。いまではli'ili'iの商品は、全国の大手雑貨チェーン店や、雑貨ショップ、セレクトショップなどの店舗に置かれている。これが次々と好循ターやデパートなどのお店で売られているとき、嬉しいし、誇らしく思う」、「見学のお客さんが商品を嬉しそうに買ってくださるのが嬉しい」、「徐々にうまくつくれるようになることが仕事のモチベーションになっている」と、商品に誇りを持ち、リンクラインの社員であることに誇りを持っていた。仕事のほか、「会社の運動会などのイベントに参加することも楽しみ」と話す人もいた。 リンクラインでの障害者雇用について、親会社であるコムテックでの評価をお聞きした。最初のころは、親会社に石鹸の販売に行っても、「いいことをやっているね」という程度の認識で、自分たちには関係ないという空気が強く、商品すら買ってもらえなかったという。しかし、10年経ったいまでは、商品とその製造を行っている社員が注目を浴びるようになり、親会社内での認知度も高まっていったという。そして、親会社で行われる年間MVPの表彰にリンクラインの社員が選ばれるようになった。「表彰のときのスピーチは、堂々としてかっこいいコメントを話すんです」と、神原さんが満面の笑みをたたえながら話してくださった。環を生み、有名な観光地の土産物や世界的に有名なキャラクターなどとブランド契約もしている。当初16人だった障害のある社員は、いまでは23人。年商は1億円を超えたが、まだまだ発展途上にあるとのこと。技術と手間は惜しまないからこそ、一つひとつのクオリティが高い。だからこそ機械ではつくれないし、誇りを持って仕事ができる。「社員は一人ひとりみんな違う、年齢もバラバラ。だから、垣根なんてなくていい」。そんなインクルーシブ(※1)で小さな会社を実現している。 1階にある石鹸工場では、社員のみなさんが作業服にマスクと帽子も着用し、真剣な表情で黙々とアートソープ製作に取り組んでいた。固まった石鹸を型から取り出し、バリ取り(※2)をしている。アートソープ製作の現場は、まるでお菓子工場のように華やかで、甘くさわやかな匂いに溢れていた。キウイ、スイカ、オレンジ、バラなどの石鹸のほか、それぞれの果物を組み合わせてキャンディのように固める石鹸など、その種類は70種類にもおよぶ。これらの石鹸をプレゼントしたら、きっと笑顔が返ってくるだろう。社員のみなさんにお話をうかがった。「自分がつくった商品が、ショッピングセン6年目にして単独黒字化を達成まるでお菓子工場のような製造現場親会社とリンクライン働く広場 2020.2まるでお菓子やフルーツのような自社ブランド「li'ili'i」の石鹸工場内で製造過程を説明する神原さん(左)※1 インクルーシブ:社会的包摂、社会的包容のこと※2 バリ取り:不要な突起を研磨する作業22

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