働く広場2020年3月号
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働く広場 2020.3提案したり、逆に『こういう業務あるけど、クリエだったらいくらでできる?』と持ちかけられたりしながら仕事を増やしてきました。先日も高機能印刷機を購入したので、これから新規業務を開拓していくところです」ただし、グループ内であっても業務獲得はシビアだという。「それまでと同じ品質・スピードで請け負うことができても『その金額なら部署内でやったほうがいいかも』といわれることもあります。クリエに任せたほうがメリットがあると思われないといけないので、価格交渉を含め外注業者との競争です」 メインルーム向かい側の作業スペースでは、4人がそれぞれパソコンと向き合っていた。行っていたのは「テープ起こし(反はん訳やく)」。親会社などで頻繁に行われるさまざまな会議の音声から議事録をつくっている。だれが取り組んでも同じような表現になるよう、チーム内で話し合いながら「経企(けいき、経営企画)」といった社内の専門用語などを「用語集」にしている。全員で大丸松坂屋百貨店の定例会議も見学し、経営幹部の名前と声を覚えることで作業効率も一段と上がったそうだ。森野さんが話す。「最初は1分の音声を起こすのに40〜50分かかっていましたが、1年ほど経ったいまは10数分まで縮みました。月30時間超分を反訳できるようになっています。彼ら自身、一般業者に負けないクオリティを目ざしているようです」テープ起こしのほか取引先の情報入力、グループ会社の販売員ら750人分の勤務シフト入力、書類の電子化など計7業務を担当している。チームの1人、吉よし田だ悠ゆう太た郎ろうさん(32歳)はクリエの設立時に入社した。大学卒業後に別会社に就職したが、体調を崩し3年ほどで退職。病院でデイケアを受け就労移行支援事業所を経てクリエに入ったそうだ。森野さんは「入社当初は、ほとんど周囲と会話もしなかったのですが、いまはリーダー役まで務めてくれています」と成長ぶりを話す。吉田さんも、「クリエでは上司のみなさんが自分のことをよく見てくれ、弱みや課題も含めて理解してくれているのでありがたいと感じます」とふり返る。自らキャリアアップに向けて努力もしている。「通信教育で簿記3級をとり、いまは2級に挑戦中です。社内会議にも専門用語がよく出てくるので役立ちます。今後は経理の仕事にも挑戦できたらと思っています」日によっては、一日中テープ起こしの作業になることもある。1時間ごとに10分の休憩があるので、隣の休憩室でリフレッシュするほか、「休日には意識的に犬の散歩や趣味のピアノを弾いたりして気分転換を図っています」と吉田さん。 山岸さんや森野さんを始め、クリエに出向している指導員・マネージャーの社員6人はいずれも社内公募で選ばれている。パソコンチームの指導員をつとめる熊くま田だ幸ゆき裕ひろさんは2019年3月に大丸心斎橋店から出向してきた。「クリエはまだ新しく小規模な組織で、責任ややりがいも大きいと感じたから」だそうだ。「日ごろのコミュニケーションでは、〝ゆっくりていねいに、慎重に、具体的に〟を心がけています。各メンバーができることを少しずつ増やしていきたいです」採用・広報担当の金きん庫こ佐さ織おりさんも同時期にグループ会社から出向してきた。「ママ友のお子さんが発達障害ということで相談を受けているうちに、大学で学んだ心理学を仕事でも活かして働きたいと思うようになりました」と応募動機を教えてくれた。代表取締役社長の松林さんは、一緒に働く出向社員を公募制で選ぶことのよさを語る。「自ら希望して出向してきた彼らが、意欲を持って仕事や指導に向き合い、これまで社内でつちかってきた経験や人脈チームで取り組むテープ起こし公募で集まった指導員たちイヤホンで会議の録音を聞き、パソコンで議事録に起こしていく反訳作業営業グループマネージャーで障害者職業生活相談員の森野広昭さん※2 大阪府障がい者サポートカンパニー優良企業:大阪府が認定する、障害者の雇用や就労支援に積極的に取り組む事業者※3 大阪府ハートフル企業教育貢献賞:障害のある生徒の職場実習の受入れや雇用など、支援学校などに対して職業教育に関する貢献が著しい大阪府内の企業を大阪府が表彰するもの8

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