働く広場2020年3月号
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えてストレス負荷のかかる内容にしているため、ストレス耐性が身につき就労後の職場環境のほうがやさしいと感じられるようになります。そこも定着している理由の一つだと考えています。 就労後の雇用継続に向けた支援については、就労後3カ月程度の「職場適応段階」と、それ以降の「職場定着支援」の段階では、スタイルが変わります。 「職場適応段階」においては精神障害者の多くが勤務開始後1カ月~3カ月で調子を崩す傾向にあり、それが離職要因の一つとなってしまうため、その要因を最小限にできるように合理的配慮をお願いしています。具体的には、時間的配慮として、初めはフルタイムではなく週に20時間程度の時短勤務から始め、半年から1年を目め処どに30時間以上にしてもらうようにしています。 多くの方からの指示による混乱を避けるため指示命令系統を一元化してもらいますが、担当者は1人ではなく2~3人にしてもらっています。これは担当者が1人ですと、休んだときや出張、異動に対応できなくなってしまうリスクがあるためです。対応は「一般社員と同等にしてもらうこと」、「調子を崩すことはあくまでも想定内としておくこと」なども大切だと思います。 「職場定着段階」でいちばん大事なポイントは合理的配慮の見直しです。また、だいたい就労後2~3年で離職する精神障害者が多いので、離職しないキャリアプランも必要だと思います。 医療情報の提供は、医療機関のできる大きな役割です。調子を崩したときに周囲から見て取れる状態や、そのときの対処、本人の不調となる傾向と対策について書面や口頭での説明を実施します。就労継続を実現するために、精神科医師、看護師、心理療法士、作業療法士、精神保健福祉士の5職種から構成される多職種チーム(Multi disciplinary Team)が定期的に本人のニーズをくみ取り、支援計画の作成、進捗状況の確認をしてい調を伝えたり、自分自身をコントロールしたりすることができている点です。そして、会社全体で精神障害者を仲間として受け入れ、一緒に働く経験を共有してきたという点も、現在の雇用率につながっていると思います。 2009年にハートフルプロジェクトを発足させたときに、障害者の職域を本部や会計センターだけではなく、店舗へと広げました。これにはいろいろな意見があったのですが、この改革を通じて、スタッフ同士で助け合う姿勢を大切にしました。その後も、年度に応じてさまざまな取組みを行っています。 採用にあたっては、その人が「何を目標に当社で何をがんばりたいか」を重要視しています。また、本人や支援機関に配慮事項やプロフィール表を作成してもらうことも大切なポイントです。 仕事の内容は、障害の特性・個々の特性・能力に合わせたものとしていますが、同じ診断名でも人によって違いがありますので、しっかりとその人自身を見ていくようにしています。 また、障害者職業センターなどにお願いして、ジョブコーチにも支援をしてもらっています。全社ます。 医療機関だからこそ、病状の管理や生活支援、今後の方向性といった「医職住」についての支援が、期間の縛りがなくシームレス(※)に提供できると思います。 松爲 続きまして、「株式会社良品計画」の成澤岐代子さんにお話をうかがいましょう。成澤 「株式会社良品計画」の成澤と申します。当社では2000年に障害者雇用をスタートし、2009年には「ハートフルプロジェクト」を発足させ、障害者雇用を促進してきました。当社には「仕事」、「風土」、「目標」、「幸福」という四つの大きな旗があり、障害者雇用の基本的な考え方にもなっています。これは、「障害者も含めた全社員が目標を持って、みんなでお互いに助け合うことが自分たちの幸せであり、お客さまの幸せにつながる」というものです。 現在の障害者の雇用率は4・22%(331人)、そのうちの82・2%が精神障害者です。ここまで精神障害者の雇用が増えているのには理由があります。まず、当事者本人がご自身の病状を理解され、体障害があってもなくても、仲間として働ける職場座公談開会「働く広場」清澤康伸さん働く広場 2020.3※シームレス:途切れのない、継ぎ目のない22

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