働く広場2020年3月号
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員共通で使える仕組みとして『24時間相談センター』を設置しており、何かあれば、すぐに精神保健福祉士へのメール相談や電話相談ができる体制も設けております。 評価・昇給制度は、定着の最も大きなポイントになると思います。当社では、年に2回の評価を行い、結果をしっかりとフィードバックして給与にも反映することで、次のステップと雇用定着につなげています。 育成の面では、本人の希望した場合の異動などがあります。通常業務だけではなく、直営キャンプ場でのキッズキャンプや、田植えなどのイベントを通じて経験を広げる機会も提供しています。 ひと口に精神障害者といっても、人それぞれ違いますので、本人の特性に合ったサポートをして、モチベーションにつなげていくことが大切だと思います。松爲 では次に、「東京障害者職業センター」の吉岡治さんにお話をうかがいましょう。吉岡 「東京障害者職業センター」の吉岡です。地域障害者職業センターは、障害者の就労の促進と職場定着を図るため、障害のある方、事業主の方など、多様なニーズに対応した職業リハビリテーションサービスを提供しています。特に、障害者と事業主の双方へ支援を行うジョブコーチ支援においては、精神障害者についても多数の支援実績があります。ここでは、私どもの提供している支援の内容についてお話ししたいと思います。 精神障害の特徴は「治療しながら働く」、つまり疾病と障害が共存した状態であるという点です。環境の変化を受けて症状が変化しやすいため、医療機関との連携は不可欠であり、症状の安定のためには、当事者と職場双方の継続した取組みが必要です。 就労後、おおむね3カ月は、「職場適応」のための支援を集中的に行います。障害者側への支援としのサインをよく知ることでセルフマネジメントにつなげることが重要であり、さらに、自分がストレスや疲労を感じるのにはどのような場面があるのか、ストレスサインに対処する行動は何なのか、ストレスサインをキャッチしたら周囲からどのような配慮を得たいかなどについて、あらかじめ職場の上司と取り決めておくことが、予防的な対策として効果的です。 疲労や気分といった感覚的なものを可視化するためには「生活リズム表」などのツールも有効です。睡眠時間、疲労度、気分などを数値化して上司と共有することで、ラインケアの介入により事態の悪化を防ぎます。セルフマネジメントを効果的に行う前提として、障害者ご自身が客観的に自分のことを知ることが必要です。自己理解を深めるには、一つの方法として自分の特性や周囲へのお願い事項などを言語化した「ナビゲーション・ブック(取扱説明書)」や、先日厚生労働省から発表がありました「就労パスポート」などを作成するのも有効です。 こうしたセルフマネジメントの手法などについては、ジョブコーチの活用を通じて、ご提案させていただいております。ては、本人の特性などを理解したうえで、職務とのマッチングを吟味した後は、仕事で求められている技能の習得や、職場のルールの体得、職場の人間関係の構築などについて取り組みます。一方で、企業側には、受入れから、職場定着までの障害者雇用全般にかかわる支援をしていきます。必要に応じてジョブコーチ支援を活用して進めていくこともあります。 精神障害者の職場不適応の状況の多くは、「症状悪化」、「意欲の低下」、「疲労の蓄積」といったものが挙げられます。職場適応期には、このような状況を生じさせないような支援の枠組みづくりが必要となります。一例として、産業保健分野で使われている「セルフケア」、「ラインケア」という言葉がありますが、精神障害者が働く職場においても有効です。 「セルフケア」とは、当事者自身が、自分のストレスや疲労へいち早く気づき、自ら対処することを指します。 一方で、「ラインケア」は、上司と部下という関係性をベースに共有された情報をもとに、上司がご本人との個別相談などを通じて、職場環境の改善などを実施します。当事者は、自分のストレスや疲労「セルフケア」、「ラインケア」で病状のマネジメントにつなげる成澤岐代子さん働く広場 2020.323

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