働く広場2020年3月号
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 松爲 ありがとうございました。「職場適応」と「職場定着」の両側面について、詳細にお話ししていただきました。 では、この先は、この座談会に参加をお申し込みされたみなさんより、事前にいただいたアンケートから見えてきた課題について、話し合いたいと思います。初めに、定着のむずかしさの背景とその対策について、清澤さんと吉岡さんにうかがいましょう。清澤 ほとんどの医療者が、就労場面や、その先を見据えた治療をしていないという現状があります。就労場面を想定した対処方法をきちんとお伝えしていないことが課題だと思います。吉岡 ご本人の課題以外にも、人事異動や作業の変更や追加など、長期に職場に属することで生じる変化もあります。こういった変化が生じた際には、なるべく早い段階で支援機関がかかわり、必要に応じてジョブコーチによる支援を行うことが効果的だと思います。松爲 当事者のセルフケアを企業として、どのようにサポートしているのかについて、増見さん、成澤さんにうかがいたいと思います。増見 精神障害のある方は、体調や心の調子の「ゆらぎ」があります。当社では、それをいち早く発見するために、毎日、体調を確認しています。すると、何が問題なのか、どんな業務を割りふればいいのかなどの対策を講じることができます。成澤 会社にどのような制度があるかを伝えることによって、体調の悪いときには無理をしなくてもよいことをわかってもらうようにしています。当社には、3カ月の休職制度がありますが、もっと長くなる場合にも、個別の対応をしたり、出勤率が足りなくても次年度の年次有給休暇を付与したりしています。勤務時間の変更などにも対応しています。松爲 モチベーションアップのために、企業として、取り組んでいることはありますか。成澤 一人ひとり目標が違いますまた、医療チームでかかわっているため何かあったときの受診や治療、生活部分における支援などトータルでのサポートがワンストップで行えるバックアップ体制で企業をフォローしたいと思います。吉岡 医療機関との連携は必須だと思います。支援機関による支援が終わった後も、医療機関と当事者の関係は続きますので、診察の際に医療機関で何か気になることがあった場合は、支援機関に連絡してもらうような関係性があれば、問題が小さなうちに対処することができると思います。松爲 Kさんの将来展望などがあれば、お話しください。K 正社員になることが目標です。また、昔から小説を書くのが趣味なので、仕事をしながら、いつかそういう仕事もできればよいと思っています。松爲 Kさんのこの話は、すごく大事だと思います。ご自身が何になりたいのか、どんな仕事で人生をつくりたいのか、支援機関にも、当事者の方がそれらを考えられるような指導をていねいにしていただきたいと思います。では、この後は、会場のみなさんから、ご自由にご意見、ご質問をいただきたいと思います。ので、年2回の評価時にしっかりと話を聞くようにしています。社内でステップアップをしたい人もいれば、将来は漫画家になりたいという人もいます。そのうえで、当社でどのように働きたいのかをしっかりと話し合っています。目標への到達を会社が応援していくスタイルが、長期的な定着にもつながるのではないでしょうか。増見 月1回のコミュニケーションを大切にしております。そのなかで、何ができたか、できなかったか、何に悩んでいるのか、何を伸ばしたいのかを共有し、一緒に歩むようにしています。松爲 Kさんは、当事者としてどのような支援が必要だと感じていますか。K 通院のために休みをいただくなどの配慮はしてもらっていますが、「障害者だからこれ」といった雰囲気はありません。当たり前のことを当たり前にやっているだけです。松爲 では、関係機関として、精神障害者を雇用する企業をどのような形で支えるのがよいのか、清澤さん、吉岡さんにもお話をうかがいましょう。清澤 医療機関は医療情報を責任持って提供できるのが強みです。安心して、働き続けるために座公談開会「働く広場」吉岡 治さん働く広場 2020.324

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