働く広場2020年3月号
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働く広場 2020.3し、それぞれ2年間に1回アンケート調査を行い追跡しています。今回報告する第5期の調査では、前期調査と後期調査を合わせて視覚障害者113人、聴覚障害者228人、肢体不自由者234人、内部障害者119人、知的障害者282人、精神障害者115人、計1091人を対象に調査を実施しました。その結果、660人から回答(回収率60%)を得ています。回答者の就労率は、視覚障害者93%、聴覚障害者90%、肢体不自由者76%、内部障害者84%、知的障害者88%、精神障害者74%でした。平均年齢は、前期調査のグループは36・4歳、後期調査のグループは55・1歳でした。 アンケート調査の内容は、障害者の職業生活を幅広くとらえる観点から、調査対象者の基本的な属性に関すること、職業に関すること、職業以外の生活における出来事などに関する質問と満足度などの意識に関する質問により構成しています。また、前期調査、後期調査ともに、調査対象者個人の変化を確認するために基本的には第1期の調査から同一の内容としていますが、今回のように時勢の変化をふまえた質問の追加などを行っています。   回答者のうち現在就労している556人の「障害のある方への差別禁止指針と合理的配慮指針の把握状況」、「2016年4月以降の職場での合理的配慮に関する話合いの機会の状況」は、次のグラフの通りです。  障害者の安定した就業を進めていくためには、障害者の就職、就業継続、離職の各局面における状況と課題を把握し、これに応じたきめ細かい対策を進めていくことが不可欠です。このため、長期継続調査により、現状と課題を継続的に把握し、企業における雇用管理の改善や今後の施策展開のための基礎資料を得るため、2008(平成20)年度から16年計画で本調査研究を行っています。第5期(9年目・10年目)の調査では、2016年4月より改正障害者雇用促進法が施行され、すべての事業主に雇用の分野における障害者に対する差別禁止と合理的配慮の提供が義務づけられたことをふまえて、「事業主に対する障害者への差別禁止指針と合理的配慮の指針について、聞いたり読んだりしたことがあるか」、「2016年4月以降に職場において支障となっていることの確認や話合いの機会があったかどうか」という新たな設問を追加しました。 本調査研究の研究デザインである長期継続調査は、個人に対して長期にわたり継続して調査することにより、ある状態や状況と別の状態や状況との間の因果関係をより正確に、また時系列の変化をふまえて検証することが可能になるという性質を持っています。本調査研究ではこの法改正によって、障害者の仕事の満足度にどのような影響があったかを分析しました。   本調査研究の特徴である長期にわたり個人を追跡する研究方法は、欧米で1960年代後半から賃金、就業、家計などをテーマとした調査がスタートしており現在も続いています。日本でも1980年代後半からさまざまな調査が開始されています。障害者を対象とした就業に関する長期にわたる本調査研究はまれな取組みであり障害者団体などからも注目されているところです。 本調査研究は2008年度の開始時に、就業している40才未満の対象者のグループを「前期調査」、就業している40才以上の対象者のグループを「後期調査」として二つのグループを設定ー合理的配慮に関する職場での話合いと仕事の満足度ー調査研究報告書№148「障害のある労働者の職業サイクルに関する調査研究(第5期)」障害者職業総合センター研究部門 社会的支援部門(※)はじめに1長期継続調査の概要2差別禁止と合理的配慮指針の把握状況と職場での話合いの機会の状況328

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