働く広場2020年3月号
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働く広場 2020.3 いま、社会や経済のあり方が、大きく変わりつつあります。コンビニエンスストアやファストフード店で外国人や年配の店員を見かけることが増え、女性の運転するバスやタクシー、列車や配送トラックが目立つようになりました。空き家の増加、シャッターを閉じた店が多い商店街、廃止・統合される小学校や中学校、若い世代の患者をあまり見かけない医療機関、バス路線の減便や廃止、過疎化が進み廃はい墟きょ化する集落など、地域によって、人によって、気づくところ、変わったところは違うでしょうが、さまざまな変化が起こっています。こうした変化の多くは、人口の減少や高齢者世代の増加など、急激な少子高齢化の影響によるものです。今後、さらにいろいろな影響が表面化し、人手不足や介護問題、過疎化など社会的課題の拡大と深化が進むことは避けられません。当然、私たちの暮らしも影響を受け、税金・社会保険料の引上げや社会保障の見直しにより負担や制約が増えるなど、大きな変化にさらされていくことになります。このような変化を国家規模で経験した例は、まだ世界のどこにもありません。厳しい少子高齢化に加え、自然災害も多発するこの国は「課題先進国」といわれ、そこに暮らす私たちは、だれも経験したことのない時代を切り開いていくことを迫られているのです。 私たちが向き合っているのは、これまで「あたりまえ」だと思われていたことがあたりまえではなくなり、「新しいあたりまえ(常識)」が生まれる時代といえます。私たちは、それぞれの生まれ育った時代と社会を背景にした「あたりまえ」を数多く抱えていますが、それらが大きく変わろうとしているのです。例えば、少し前までは、列車のなかで新聞や週刊誌を読むことがあたりまえでしたが、いまでは、あまり見られなくなりました。新聞を配達してもらっている家庭も減りました。スマートフォンのニュースや動画サイトで用が足りるのでテレビを持っていないという若い人も増え、マスメディアのあり方が大きく変わりつつあります。家族のあり方も変わりました。三世代同居があたりまえだった時代は、それほど前のことではありませんが、いまではひとり暮らしが大きな割合を占めるようになり、大都市圏では、一人暮らしの高齢女性が急増すると懸念されています。家族のあり方、家族という結びつきが大きく変わりつつあるといえるでしょう。社会的弱者と見なされることが多かった高齢者や障害者の立場にも変化が見られます。高齢人口が増えることで、健康や生活に問題や課題のある人が社会の主流派(メインストリーマー)になったことが大きな要因と考え課題先進国の不安新しい「あたりまえ」が生まれる時代関西学院大学人間福祉学部 教授生田正幸テクノロジーが変える課題先進国の福祉と介護2

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