働く広場2020年3月号
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働く広場 2020.3 老舗百貨店として知られる「大丸」と「松坂屋」が2007(平成19)年に経営統合した「J・フロント リテイリング株式会社」(以下、「J・フロント」)は、2017年に特例子会社「株式会社JFRクリエ」(以下、「クリエ」)を設立した。障害のある社員は8人(知的障害5人、精神障害3人)からスタートし、現在は21人(知的障害13人、精神障害8人)。J・フロントのグループ内から出向してきた指導員ら6人を加えた計27人が、ともに働いている。設立時から代表取締役社長を務める松まつ林ばやし秀ひで幸ゆきさんによると、クリエをつくる大きなきっかけは、J・フロント設立10年目にあたる2017年に策定された中期ビジョン。重点課題の一つにダイバーシティの推進が挙げられ、それまで各グループ会社任せだった障害者雇用に全社的に取り組むことになったという。社名の「クリエ」は、グループの行動指針「未来を創ろう!(Create the future)」が由来だそうだ。設立準備期間は半年ほどしかなかったが、松林さんたちは他社の特例子会社をいくつも見学し、障害者雇用で大切なことや、逆に「やってはいけないこと」などを教えてもらったことが有意義だったという。「例えば私は当初、特例子会社ということでいろいろ気を遣わなければと思っていましたが、ある企業の方に『福祉施設ではないのです。普通の会社として考えてください』といわれ、ハッと気づかされました」クリエの採用面接では、「『I Will』が熱く語れること」を求めている。「私は○○ができるようになりたい」、「こんな仕事がしたい」といった意気込みを聞くのは、一般企業と同じだ。そして実際に働く職場では、「みんなが一緒に仕事をしていくうえで『配慮はするけど、遠慮はしないよ』という姿勢を基本にしています」と松林さんは話す。工夫しているのは勤務条件だ。勤務時間は通勤しやすいよう、朝の通勤ラッシュ時間帯を避けて、10時〜17時30分と設定した。昼休憩50分のほか1時間ごとに10分休憩が4回あり、実働時間は6時間となっている。休日は週休2日の計算だが、土曜日の業務もあるためシフト制で交代勤務としている。また、ゴールデンウィークや年末年始などの大型連休の代わりに、5連休を年4回取得できるのが特徴だ。給料は、グループ会社の契約社員とほぼ同じ基準で決められている。設立当初の業務は「リボン製作」、「封入作業」、「連絡便仕分け」の三つだったが、2年半で20業務まで増えた。これらの業務に「オフィスサポート」と「パソコン」の2チームに分かれて取り組んでいる。一人ひとりの特性や業務の向き不向きなどを見て、新たにできそうな業務を考えながら、グループ会社に営業をかけて少しずつ増やしてきたという。「こうした取組みの背景には、会社のポリシー『〝人〟としての幸せの実現』があります。『この業務ができる社員を採用する』のではなく、『採用した社員にどんな仕事ができるだろう』という視点で履歴書や本人の話などを参考に、いろいろな業務に挑戦してもらってきました」 クリエの職場を見学させてもらった。事業所はJR高たか槻つき駅南口の松坂屋高槻店の5階に、いくつかのグループ会社とともに入っている。老舗百貨店グループの特例子会社設立翌年からアビリンピックに挑戦通勤しやすく無理のない勤務時間・勤務日数を設定。1時間ごとに10分間の休憩、週休2日および年4回5連休を取得個々の能力を活かせる仕事をつくり出す親会社から出向してくる指導員は「社内公募」で選出123株式会社JFRクリエ代表取締役社長の松林秀幸さんPOINT5

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