働く広場2020年4月号
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働く広場 2020.4もらい、メモにしてブラッシュアップしているところだ。 2014年度、親会社のラディックスから初めて業務委託を受けた。「コピー機の修理」だ。販売したコピー機のメンテナンスで必要になる部品ユニットの修理だが、通常ならメーカー研修を受講した技術者が行う、極めて専門的な作業だ。「戦艦大和のような難易度の高いプラモデルを、説明書なしで組み立てるようなものです」と佐久間さんは説明する。山本さんたち技術職社員も、当初は「さすがに障害のある社員にはむずかしい」と首を横にふった。だが、せっかくの業務委託を断りたくないと、まずは技術職社員だけで細々と始めたところ、「僕もやってみたい」と手を挙げる社員がいた。設立時から勤務する園その部べ豊ゆたかさん(31歳)だ。園部さんは、ひらがなも数字も苦手だ。だがある日、複雑な機械から落ちた小さなネジをすぐに元の場所に戻せた様子を見て、佐久間さんは驚いた。「本人の意欲があるなら、挑戦させてみよう」山本さんがつきっきりで教えて1カ月で1セット。「これじゃあ無理か」と思っていたが、2カ月目は7セット。3カ月目には15セットまでこなせるようになった。そこで佐久間さんは「いけるかもしれない」と感じ、業務としてスタートさせた。同じように「やりたい」といった社員を集め、総勢8人となった。もちろん、軌道に乗るまでのトラブルは数知れず。「小さなネジを1本でもなくしてしまったときは、それがいかに大事なものかわかってもらうために、2日間かけて探してもらったこともあります」と佐久間さんはふり返る。園部さん自身も、職場で何度も泣いたそうだ。親から「帰宅後の表情が暗くなった。むずかしいことをさせないでほしい」といわれたが、佐久間さんたちは「もう少し見守ってほしい」と頼みつつ、職場でのフォローにも気をつけた。「注意したあとは必ずプラスになる言葉をかけて、前向きな気持ちで帰宅できるよう心がけました」と山本さんは明かす。いまでは園部さん自ら「弟子1号です」といえるほど、自信に満ちた仕事ぶりだ。2019年度は、修理だけで年間7千万円弱の売上になった。見学に訪れた大手メーカーの役員が、彼らの作業の様子を見て「信じられない」と驚嘆し、それが縁で、メンテナンス保証つきで中古品を再販売できる唯一の取引先となった。OA機器の清掃からメンテナンス・修理までを手がけ、周囲から「職人」と呼ばれるようになった社員たちの部署名は2015年度、「リサイクル事業部」から「クラフトマンシップ事業部」に変更された。ちなみに、リベラルでは採用当初から正社員雇用であり、勤務時間は9時から18時の実働8時間。年収は平均280万円(賞与など含む)ほどになるが、社歴や仕事内容によって昇給し、高い人は350万円を超えるという。「それだけの仕事をしてくれていますから。見学に来る企業の方たちも、彼らの様子を見て『これほどやっているなら当然ですね』と納得されます」昨年から今年にかけて7人の社員が勤続10年となり、顔写真が刻印された記念トロフィーが贈られた。リーダーも4人育ち、クリーニング3チーム、リペア1チームを率いる。昨年は「会社参観日」を開催した。勤務「クラフトマンシップ事業部」修理作業では、さまざまな部品を取り外し、正しい位置に組み直さなくてならない園部豊さんは、専用剤を使い分け、パーツ一つひとつを磨き上げる8

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