働く広場2020年4月号
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働く広場 2020.4時間内に見学に訪れた親や兄妹から「こんなにたいへんな仕事だったとは知らなかった」、「息子の成長ぶりが誇らしい」などの感想が聞かれ、大盛況だったそうだ。 2014年から精神障害のある人の採用も始め、いまは4人に増えた。統合失調症、双極性障害、解離性障害、発達障害など、さまざまだ。電話機などのクリーニング作業から仕入れ業務・データ消去・キッティング、集計代行業務、広報業務と、それぞれの適性に合わせて業務を任せている。入社後に入退院をくり返したり、佐久間さんが定期的に主治医との面談に同行したりしたケースもある。ただ最初からフルタイムという勤務条件で採用し、全員がほぼ貫いている。理由について佐久間さんは「最初の1カ月間は知的障害のある同僚たちと同じクリーニング作業を担当してもらうことで、『彼らがこんなにやっているのだから、自分も』と人生観が変わるみたいです」と話してくれた。「私もその1人です」と語る広報担当の武たけ田だ牧まき子こさんは、障害者採用で2016年に入社した。心臓を患った際に、精神的な病気にもなったという。「病気になり、フルタイムで働くことができなくなったので、会社でもパート勤務に切り替えようと思っていました。そんなとき、縁あってリベラルに入社し、社員の働きぶりに驚き、感動しました」武田さんは「リベラルの社員を、もっと知ってほしい」と自ら広報担当を希望し、ホームページを充実させ、さまざまな紹介動画や資料をリリースするなど大活躍している。 リベラルが大切にしてきたことがいくつかあるが、なかでも佐久間さんは「製販一体型組織」を第一に挙げる。以前、職場が移転する際に、管理部門と生産部門を分けようという話が持ち上がったが、断固反対したという。「クリーニングや修理を懸命にこなす社員を日々見ているからこそ、営業担当の社員も『彼らのがんばりを無駄にしたくない』と奮起します。そして目標を達成したときの喜びも、社員全員で分かち合えます」収益は、初年度の2008年度から黒字、10年後には売上が5億円超の8倍にまで伸びた。売上が鈍化しそうになった昨年は、初めて全社員での会議も行った。営業先の開拓だけでなく、需要が見込まれる機器類をあらかじめ多めに仕上げるなど、まさに製販一体となって取り組んだそうだ。リベラルの経営方針と今後について、佐久間さんに聞いた。「特例子会社としての『事業性と社会性』を重視しています。雇用率にかかわらず採用を続けるべきですが、親会社に依存しない経営なので、常に危機感を持って臨んでいます。それがまた社員たちの力にもなっています」リベラルではいま、品質管理の看板ともいえる「ISO9001」の取得を目ざしている。「特例子会社で中古OA機器のISO9001取得というのは、なかなかありません。社員もさらに誇りを持って仕事や営業ができると考えています」と佐久間さんたちは意気込む。新規事業として同じような障害者雇用に取り組む国内の団体や企業との連携も広げている。また地元の就労継続支援B型事業所や特例子会社5カ所にもリベラルの業務を委託し、地域ぐるみでの底上げを目ざしている。最後に佐久間さんは、長期的な課題として、社員のリタイア後の生活を挙げた。「65歳の定年を迎えて『お疲れさまでした。はい、さようなら』とは、とてもいえません。ここまで家族のように一緒にやってきた社員たちが、その後も一緒に過ごせるような居場所づくりや生活支援のことも含め、会社としてどこまで何ができるか、しっかり考えていくつもりです」精神障害のある人の採用一緒に働いてこそクラフトマンシップ事業部で広報を担当する武田牧子さん9

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