働く広場2020年4月号
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す。今後は、親会社の技能検定の種類に応じて、適性のある社員を動機づけして訓練し、製造現場に直接貢献できる人材の育成を目ざすということです。これらの対応により、親会社からの信頼を得て職域の拡大につながるとともに、親会社の生産工程の一翼をになえる社員には、継続的な雇用を担保しやすくなるため、配置転換などの加齢対策の選択肢を広げられることになります。 障がいのある社員の職務は、実習期間中に本人の特性を見極め、実務を通じて早期に業務習得を図り、長期的には、難易度の低いものから高い作業へ、あるいは、判断をともなわないものから判断を要する作業へと配置転換を進めています。さらに、作業を細分化し、小集団で複数工程を担当したり、既存の機器の改善や新規設備を導入して、能力低下による業務成果への影響を最小限に押さえています。それでも、作業速度や精度の低下が著しくなってきた場合には、ノルマや負担が少なく前後の工程への支障のない作業に配置換えをすることもあるということです。実際に、こうした仕事の再配分によって、十分に能力が発揮できるようになる従業員もいるそうです。さらに、加齢による職務遂行能力の低の指導を受け、職域を拡大し、それによって社員の職場定着と長期雇用を確保していくことが、経営戦略の特徴となっています。親会社には、まだ仕事を切り分けて委託する余地が十分にあると判断し、それらの仕事に熟知している人材とともに、仕事を提供してもらっています。しかし最近は、親会社の社員の高齢化と人員減少のために、こうした人材の提供がむずかしくなりつつあります。そのため、親会社の仕事のうち、障がいのある社員だけでも十分に対応できる業務を切り分けて特例子会社に回してもらうことで、業務受託を維持・拡大できるよう調整しています。 川田さんによれば、現在も親会社からの業務委託ニーズはさまざまにあって仕事を依頼されるのですが、肝心の富士電機フロンティア自身に、それに応えるだけの受け皿が不足し、十分に対応できない場合もあるとのことです。そのため、社員の能力開発が重要な課題であり、その一環として社内外の技能検定制度を活用しています。現場のラインでは、親会社の資格取得制度と同じ検定制度を採用して、親会社の水準に則した技術を獲得して、職域拡大の可能性を高めることを目ざしていま指導員は、親会社の業務に精通している管理監督者(製造分野であれば製造主任・作業長)や、ベテランの技能・技術者などのなかから、後進に道を譲る、あるいは定年退職のタイミングで、障がいについて理解のある人材の獲得を図っています。彼らは、技術指導のベテランですから、親会社の技能・技術者がになっている業務の一端を障がいのある社員に習得させることが可能です。これによって、親会社の信頼を得ることができ、職域の拡大につながります。また、職場での就業面と地域での日常生活面の双方の支援を行っています。こうした支援は、本人や家族に有用なばかりでなく、現場の不安や負担の解消、雇用継続のための方法に関する相談など、重要な役割を果たしています。こうした指導員による実際の支援によって蓄積されたノウハウは、研修を通して全事業所の指導員が共有する体制になっています。また、支援の記録は長期的に保存され、個々人の能力の変化を把握して、加齢による能力の低下や将来を見越したキャリア形成の支援に活用されています。 親会社から指導員を受け入れて、業務(2)親会社との緊密な関係の維持(3)能力開発と技能検定(4)配置転換と工程改善働く広場 2020.4技術指導のベテランから親会社の作業行程を学ぶ(写真提供:株式会社富士電機フロンティア)23

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