働く広場2020年4月号
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に、どこまで会社がかかわるべきか悩ましいところだと思います。 働く意欲を職場で醸成するには、さまざまな方法が考えられます。例えば、興味や関心のある作業への従事、新しい仕事やむずかしい仕事への挑戦、職場での役割遂行の重要性の十分な説明、社内での責任ある役割の付与、昇給などです。川田さんや金田さんによれば、指導員は社員との定期的な面談を通して、本人の立てた年間目標の達成度を、半年ごとに本人とともに確認しています。また、その結果に基づいて賞与などで評価しています。さらに、関心を示したり難易度の高い作業への配置換えの申し出があった際は、可能なかぎり挑戦させたり、日常的に上司や同僚から言葉かけをするなど心理的な支援をすることで、本人に役割意識を持たせるようにしています。仕事に対する目標を明確に意識させながら将来に向けた人生設計を支援することは、メンタルへルスの面でも、加齢に対する予防的な対策としても重要でしょう。  知的障がいのある社員の加齢現象に対領域に会社としてどこまでふみ込むべきかが課題になると指摘しています。金田さんは、業務課長として日常的に支援しているなかで、会社も生活支援の領域にふみ込まないと、本人の加齢現象への本格的な支援はできないと感じています。また、就業後の生活においてストレスを感じていないかどうか、本音を聞き出すことが大切だそうです。そのため、本人の余暇を充実させることも生活支援では求められ、遊び方やショッピングの仕方を支援することも、ときには必要になるそうです。しかし、企業としては、こうしたことはむしろ地域生活を支援するさまざまな機関や施設が、より積極的に取り組んでもらいたいと希望しているそうです。 また、親の元気なうちに、親なき後の対応としてグループホームに入所するような支援も行っています。候補となるグループホームの世話人の考え方や活動内容を保護者に伝え、親が安心して納得のできるホームに本人を入居させられるように支援しています。そのため、家族との面談は隔年で継続的に行っており、社員の個別人事記録にも残し、指導員が変わっても家族への相談支援を継続できるようにしています。こうした家族支援も含めた生活支援下に対応できるよう就業規則を改定し、短時間勤務制度を設けています。ただし、現時点では、本制度の適用事例はまだないそうです。  こうした雇用管理の取組みと並行して大事になるのが、生活支援の充実です。一般的に、知的障がいのある人の多くは、日常生活面での継続的な支援を受けることで、職業生活が維持されやすくなります。そのため、家族や支援者が本人の生活自立をサポートし、それを維持する体制があると、企業は技能の習得に焦点を当てることができ、習熟期間を短縮し熟練技能者の業務の一部を担当できる能力を獲得できる可能性が高まります。それによって、企業の求める役割や技能を維持できる期間が長くなり、結果として、加齢にともなう能力低下を遅延させることにつながるからです。川田さんによれば、長く在職してもらうためには、会社にいない時間をどう過ごすかが大切であり、どのような社会生活を送っているかが仕事の遂行状況に直接的に影響するということです。それだけに、本人の生活を支える家族の協力が不可欠なのですが、他方で、生活支援の雇用継続に向けた生活支援雇用継続の可能性の見極めと事前の対応(1)生活相談と支援(1)雇用継続の可能性の見極め(2)家族支援(3)働く意欲の醸成働く広場 2020.4検定制度などを活用し、親会社の社員が行う行程をになえる社員を育成する (写真提供:株式会社富士電機フロンティア)24

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