働く広場2020年4月号
27/36

行う運動なども、適性に効果的に行うことが、最初に述べた早期老化への予防と対策にもつながるということです。 富士電機フロンティアは、今後の障がい者雇用の方針として、雇用の拡充に加えて﹁定着支援﹂にウエイトを置くことを目ざしています。そのために、①本人の成長、②保護者の障がい受容と本人の成長をうながす行動、③社会の障がい理解、の三つのポイントをふまえながら、﹁産学官連携﹂と﹁地域ネットワーク﹂の構築を目ざしていくとしています。障がいの有無にかかわらず、人は働くことを含めたキャリア形成の過程を通して生活の質(QOL)の向上を目ざすことでしょう。そのため、障がいのある人に対する支援のあり方は、その人生の時間軸に沿って継続性を持って行われなければなりません。家庭や学校での支援や教育のあり方が、社会人としての生活につながることを、あらためて確認することが重要です。企業における障がい者の加齢問題もまた、そうしたなかでとらえることが必要となってきています。しないということです。障がい者の法定雇用率がアップするなかで、障がい者雇用の拡充の必要性に迫られている企業も少なくないと思われます。小形さんは、﹁長年に渡って企業に貢献してきた社員だからできる仕事があるはず﹂と、可能性を探りサポートしていきたいそうです。指導員の継続的な指導があれば、十分に仕事をこなせるだけの能力が残っており、指導を受けつつチームとして仕事をすれば、加齢化への対応は可能であると金田さんも指摘しています。そうした視点から、社員として在籍中に、就労支援機関と連携して今後の方向性を検討するとのことです。 企業における加齢問題を企業内部だけの問題としてとらえることは、必ずしも適切とはいえません。就職前の学齢期全体を通して、働くことの意義とそれに向けた人生設計について自覚をうながすとともに、それに向けた具体的な進路指導(キャリア教育)が不可欠です。小形さんも、障がいのある人の加齢への対策は、入社してから始めるものではないと指摘しています。学齢期を通して学習して獲得してきた﹁知・情・意・体﹂の特性は、そのまま社会人としても意味を持ちます。ですから、例えば、学校でする重要な課題は、雇用継続の可能性の見極めとそれに向けた対処であることはいうまでもありません。同社では、体力面の低下が顕著になると作業能力の維持が困難になり、精神的なダメージを受けると作業能力が低下するという傾向が見られるようです。そのため、雇用継続の可能性の見極めは、年齢ではなく、本人の状態を基に判断することになります。社長の小形さんは、本人が働き続けたいと希望するかぎりは、短時間就労の可能性も考えながら、可能なかぎりその意向に沿うように努力すると話します。他方で、本人の知力・体力低下にともなう技能水準の低下が顕著になれば、企業の経営や社員間の公平性の観点などからも、何らかの判断が必要になりますが、その見極めは今後の個別事例ごとに対応していくということです。一般的には、退職に向けてのガイダンスの際は、企業側の評価内容(事実)を伝えて現実的な理解をうながします。また、企業からの退職は人生の次の段階に向かうためのステップであり、新たな社会参加を始めるという自覚をうながすことが大切でしょう。その過程を通して、個人の自発的な決定につなげることが望ましいと考えられます。小形さんは、こうしたことをふまえつつも、雇用継続がむずかしいからただちに福祉の世界に移行させるという判断はまとめ(2)加齢問題への事前対応(3)これから目ざす方向働く広場 2020.4さまざまな作業能力に適した職域を確保することで、社員のモチベーションアップにもつながる。右は、モップ切子取り作業の様子。左は、製造現場清掃作業の様子(写真提供:株式会社富士電機フロンティア)25

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る