働く広場2020年4月号
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働く広場 2020.4した。実務に直結するよう、建築法規や図面の基本知識なども学んでもらいました。 開所当初は、私が利用者の自宅訪問などをしながら連絡や連携が取りやすい環境づくりに努め、慣れてきたころから白石設計の社員が交代で指導に入るようになりました。いまでは完全に任せています。 実際にサスケ工房の利用者の方たちに取り組んでもらう業務は、鉄骨設計図のチェックです。早ければ1カ月ほどの研修で、仕事として任せられるようになる人もいます。細かい数字や図面の変更点を見つけるのが得意な人も少なくありません。また、工房で手が回らなくなったり、小さなトラブルが生じた場合、白石設計の社員たちでカバーできるという点は、運営を成り立たせていくうえで大きな強みです。実績が認められ、図面チェックを依頼してくる取引先も増えました。――CADを学ぶ人も、現在はずいぶん増えたそうですね。 いまでは同様のA型事業所が四国内7カ所に増え、利用者は約270人になっています。そのうち在宅ワークの方も50人弱います。もともと白石設計では設計業務の半分ほどを外注しており、在宅ワークの導入も早かったので、特に問題なく広げることができました。ただし、利用者のなかには1年かかってもCAD操作に慣れないという人もいるので、その場合はICT(情報通信技術)事業に関する業務をお願いしています。 勤務形態は1日4時間勤務の方が多く、工賃は月7万円前後です。8時間フルタイム勤務の方は月16万円ほどになります。また、キャリアを積んだ10人の方は指導員として雇用しています。給与形態は白石設計の社員と同じです。 近年はアビリンピックに挑戦する人も出てきました。挑戦経験のある人から「引き続き出場したい」との申し出があり、バックアップしています。2018年の全国アビリンピック沖縄大会には、表計算の種目に2人が出場し、全国の高いレベルを知るよい機会になりました。今後はCAD種目にもチャレンジできればと思っています。――新たに立ち上げた、就労移行支援事業所についても教えてください。 A型事業所はCADに特化した業務なので、ほかの仕事をしたいという人たちを就労に結びつけられるよう、2018年11月に「就労移行支援事業所サスケ・アカデミー新居浜」を開所しました。ここではおもにパソコンスキルの習得を目ざしています。ただ実際に立ち上げてみたら、予想していたほど需要がありませんでした。「地方では、就労移行支援サービスに対するイメージがよくないのかな」と感じています。「就労移行支援事業所は、特別支援学校からA型事業所やB型事業所などにつなぐだけでしょう」といわれることもあります。サスケグループのなかでも、雇用型であるA型事業所のほうが相変わらず人気で、いまも予約待ち状態です。 ちなみにサスケ・アカデミー新居浜では、1年ほどで5人の利用者が県庁や大手企業系列会社などに就職できました。このまま実績を上げていけば、理解がより広がるのではないかと期待しています。 ――あらためて、障害者雇用についての考えをお聞かせください。 私が日ごろ実感しているのは、障害種別というよりも一人ひとり苦手なことや得意なことが違うのだということです。特にCAD・パソコン技術にかかわる専門職の仕事に関しては、感性や記憶力などで素晴らしい能力を見せてくれる方が多いです。福祉や医療面での適切なサポートがあれば、個々の能力を活かし、戦力として十分に活躍できると思っています。 一方、私たちのような設計会社は、どうしても取引先との関係が密になり、柔軟な対応が求められるため、負担が大きくなると予想されます。いまのように社員が業務を受けつける窓口となり、ワンクッション置いて、そこから仕事を割りふる方法が、結局は全員にとって無理がない方法かと思っています。社員とのやりとりも含めて、サスケ工房は社内の一部署のような存在になっていますね。 今春には、四国外にも就労移行支援事業所を立ち上げます。テレワーク業務を増やしながら、多くの利用者の働く意欲に応えたいですね。みんなで知恵や力を出し合いながら、障害のある方の雇用環境を少しでも充実させていけたらと考えています。社内の一部署のような存在3

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