働く広場2020年4月号
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働く広場 2020.4がないため、とりあえずホームセンターで清掃用品を買い集め、コピー機を可能なかぎり分解し、手さぐりで独自のクリーニング方法を考えていったそうだ。同時に、採用した5人に仕事を教えたが、覚えてもらうまでは予想以上に試行錯誤したという。ある人は作業を一つ教えて「わかった?」と確認すると必ず「わかった」と答えてくれるが、実際はできなかった。また、作業中に作業がうまくいかずパニック状態になり、突然大声を上げる人や、ひらがなが読めない人もいた。それぞれマンツーマンで教えながらマニュアルを何種類もつくった。リベラルは最初から「日本一きれいな中古OA機器をつくろう」というスローガンを立てていた。だれも目にしないような部分も、新品同様になるよう磨き上げる。汚れが落とし切れていなければ、佐久間さんが「こうすれば、こんなに変わるよ」とやってみせた。指示通り作業を続けることで、新品と見間違うほどに仕上がったが、最後は専門職によるメンテナンスが必要となったため、当時、同じビルに入っていたラディックス技術部門の社員にお願いした。仕上げられたコピー機は3日に1台。しばらくは買い入れた中古品の大部分を、そのまま別の中古取り扱い会社に再度販売することで売上を確保した。自分たちで商品が出せるようになると、今度は顧客の開拓だ。会社の周辺の商店街でチラシを配ったり直接回ったりしながら販売網をつくった。予想をはるかに上回るたいへんさに、佐久間さんは「最初の数カ月間は、終業後に上田と2人並んで座ったまま、小一時間ほど無言だった日もありましたね」と苦笑いしながらふり返る。3カ月ほど経ったある日、立ち上げから相談していた就労支援事業所の担当者にSOSを出したことがある。飛んで来た担当者は「障害者雇用はね、のんき、根気、元気でいくんですよ」と助言してくれた。そのとき佐久間さんは肩の力がすーっと抜けたそうだ。「のんき、根気、元気」はリベラルで最も大切にしている合言葉となっている。 半年ほど経つと、社員もひと通りクリーニング作業ができるようになったが、今度は分担がうまくいかなくなった。簡単な作業ばかりやりたがる人や、同じところをくり返し行う人もいた。そこで工程管理表を作成した。作業工程を表にして、終わったところにハンコを押す。仕事への向き合い方についても考えた。「仕事は時間じゃなくて、結果だよ」と伝えるために、1カ月の目標を設定した。「1カ月でコピー機20台。それを超えた月は達成パーティーをしよう」佐久間さんが自らたこ焼きをつくったり、商店街で焼きそばなどを買ってきて開く小さなパーティーだが、その日は午後を休みにした。これが明快なモチベーションとなって、飛躍的に生産性が伸びた。いまでは、月に電話機700台、コピー機60台を磨き上げる。目標値は年々上げ続けているが、一度も下回ることなく、2018年には通算100回目の達成パーティーを開催したそうだ。 クリーニング作業に電話機が加わり、コピー機の台数も順調に増加した。翌年にはラディックスから念願の技術職社員も異動してきたが、それでもメンテナン通算100回「目標達成パーティー」メンテナンス業務へ拡大フロアでは、社員がコピー機や電話機のクリーニング作業に励む社内で開かれる達成パーティーの様子。達成感がモチベーションアップにつながる(写真提供:リベラル株式会社)工程管理表には、スタンプラリーの要領で達成感が得られる工夫も6

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