働く広場2020年6月号
11/36

働く広場 2020.6ミュニケーションで心がけることなどを伝えた。「最初はみんな面倒がっていたのは事実ですが、結果として、それまで行き違っていたようなケースが減っていくのを実感してくれたのか、いまでは職場内のやり取りもスムーズになりました」佐々木さんに、川田製作所で働いていてよかったことを聞いてみた。「私のほかにも障害のある人が何人かいるおかげで、職場が全体的に働きやすいと思います。社長さんやみなさんが、一人ひとりに合わせて配慮してくれているのもうれしいです」 川田製作所では5年ほど前から外国人の従業員も働いている。第一号はフィリピン人の女性だった。ハローワークでいつものように求人票を出したら、たまたま日本人男性と結婚して小田原市に住んでいた女性が応募してきたという。「元気がよくて仕事もすごくがんばってくれました。『必要なら友だちも誘います』というため、もう2人来てもらいました」と、俊介さん。その後2人は夫の転勤で引っ越し、いまはフィリピン人の従業員は1人だ。東南アジアの人たちの活気あふれる気質に注目した俊介さんは、ベトナムの技能実習生も受け入れるようになった。1期(3年)で2人ずつ、いまは3期目の2人が来ている。「最初の1期生だけは言葉の問題もあり仕事を覚えてもらうまで苦労しましたが、彼らが引継ぎ時に2期生に母語でしっかり伝えてくれました。彼らは礼儀正しく能力も高い。大型プレス加工の自動機械など操作スキルが複雑なものも覚えが早かったため、いまでは彼らが専従でやってくれています」ちなみに毎日の朝礼では、中武さんとフィリピン人の従業員に週替わりで司会を任せている。「簡単な台本に沿って話してもらうだけですが、2人のほんわかした雰囲気や明るい声で挨拶を始めてもらうと、みんなも自然と笑顔になれます。勤務中はそれぞれが黙々と作業することが多く、貴重な交流の場でもありますから」。 9年前に入社してからIT化とダイバーシティ化を進めてきた俊介さんを、父の隆志さんも「お前のやり方で」と見守ってきたそうだ。俊介さんは、「障害者や外国人の雇用については、積極的に推進しているつもりは全然なくて、結果としてそうだったというケースばかりです。きちんと戦力になる人かどうかを評価しながら採用しています」という。実際、トライアル雇用後に採用を断念したこともある。中武さんの前例があったので、また別の人を採用しようと思っていたが、現場のリーダーが精神的に疲ひ弊へいしていることを知ったからだという。生産管理システムが向上して計画的な生産が可能となり、営業しやすくなったことから、昨年初めて営業社員を中途採用した。今春には品質マネジメントシステム規格の「ISO9001:2015」を取得予定。「受注する仕事が増えていけば、従業員も少しずつ増やしていけるかなと思っています」。「IT活用やちょっとした工夫で、障害の有無にかかわらず人材を最大限に活かす中小企業がもっと増えてほしい」と考える俊介さんは、神奈川県の中小企業家同友会ダイバーシティ委員会の副委員長としても積極的に活動している。東南アジアの活気に注目人材を最大限に活かす企業タスクツールには、その日に行う作業がリスト化されている外国人女性も重要な戦力となっている9

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る