働く広場2020年6月号
18/36

働く広場 2020.6電子メモパッドで筆談する堀ほり畑はた政まさ男おさん(45歳)。「いまの仕事が楽しい、続けていきたい」トラックの点検を行う及おい川かわ雄ゆう太たさん(23歳)。「荷物をきれいに積むことにやりがいを感じます」深刻化する人手不足をものともせず、聴覚障害者が戦力となっている運送会社がある。関東圏を中心に、拠点間のトラック運送などを手がける「株式会社グンリック」は、社員154人のうち19人が聴覚障害のある社員だ。障害者雇用のきっかけは、2015(平成27)年、大型トラックのドライバー募集の際、聴覚に障害のある人が応募してきたことだった。当時はまだ聴覚障害者を雇用した経験がなく、不安もあったが、「会社の戦力になるようにがんばれ」との社長の一言で採用が決まった。しかし、同社には手話を使える社員がおらず、日々のコミュニケーションが問題となった。そこでスマートフォンのアプリを日常のコミュニケーション手段として活用することで、情報交換を円滑に行えるようにした。また、配送先でのコミュニケーションは、障害のあるドライバーの名刺の裏に「聴覚障害者であること」、「筆談や手話での対応を求めること」を記載し、電子メモパッドを活用することで対応した。配送先の理解もあり、聴覚障害者が安心して働ける環境となった。現在では、聴覚障害者同士のつながりで、東北地方や東海地方からも応募があるという。未経験者の応募も多く、入社後に会社負担で大型免許を取得する人がほとんどだ。2019(令和元)年7月に入社した松まつ江え健けん太たさん(25歳)も、その一人。松江さんは「父親がトラックドライバーで憧れの職業でした。グンリックで働けてとてもうれしい」と話してくれた。業務営業部部長の降ふる旗はた昌まさ弘ひろさんは、「彼らは、目視による安全確認などに気を遣い、いつも安全運転を心がけています。トラックには、ドライブレコーダーやGPSによる動態管理装置を設置しています。今後は、聴覚障害のある社員にも管理者として活躍してもらうことを考えています」と前向きだ。今日もグンリックで働く聴覚障害者たちが、日本の物流の一端をになっている。16

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る