働く広場2020年6月号
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1976(昭和51)年、身体障害者雇用促進法で身体障がい者の雇用が事業主の義務になり、1997年に知的障がい者の雇用も義務化、2018年に精神障がい者が法定雇用率の算定基礎に加わったという経緯があり、早くから障がい者雇用に取り組んできた同社では、雇用対象が身体障がいがメインだった時代を経験しており、上述のチャレンジしたいという意図にもうなずける。同社は就労する人の障がいに合わせて作業しやすい治じ具ぐを考案し、作業に人をつけるのではなく人に作業をつけ、自社の技術力で障がい者の働きやすい作業現場をつくり、だれもが活き活きと働き続けられる現場を目ざしてきた。ただ、それでも同社が行うのは品質管理、生産管理、生産技術の開発が中心であり、製造の現場は、太陽の家が運営するA型事業所に製造委託していた。昨今、日本の労働市場は人手不足が深刻化している。障がい者雇用においてはかつての身体障がい中心だった求職者が、知的・精神・発達障がいに拡大し、障がい種別が多様化するという構造的な変化の過渡期にある。同社では、多様な障がい者の活躍機会の拡大をミッションとし、品質、技術、管理の3部門に製造を新たに加え4部門へ〝人財〞を受け入れている。しかも重度障がいのある人たちが多いB応接室で、オムロン京都太陽の代表取締役社長を務める三み輪わ建たつ夫おさんに会い、理由を聞いた。「オムロンの特例子会社として製造力を上げたかったのです。ものづくりの会社の本来業務である製造部門を軸に、生産技術・品質を含めた生産力を高めることで、A型事業所からさらにB型事業所の方へと、また、身体にかぎらず精神・発達障がいのある方へと活躍機会を広げることにチャレンジしたい」と明確に話してくれた。背景にあるのは「新たに就労してくる身体障がいのある人たちが減少していること。一方、精神・発達障がいのある方で就労を希望する人たちは年々増加しており、製造現場で働く障がい者も多様化しています」と、人事総務課課長の冨とみ安やす秀ひで樹きさんは指摘する。京都駅で新幹線を降り、近鉄竹田駅下車、桂川沿いにある「オムロン京都太陽株式会社」を訪ねた。事務所、工場、宿舎、食堂が建ち並ぶ。工場は、1階が「社会福祉法人太陽の家 京都事業部」が運営する就労継続支援B型事業所(以下、「B型事業所」)でソケットや付属部品を、2階は「オムロン京都太陽株式会社 製造課」で光電センサー、タイマーなどを、3階は就労継続支援A型事業所(以下、「A型事業所」)で電源ユニット、血圧計などをつくっている。ここを訪ねたのにはワケがある。2019(平成31)年4月、A型事業所から23人が、オムロン株式会社の特例子会社であるオムロン京都太陽へ一般就労したと聞いたからである。「どういう理由なのか」、「その背景は」、「何かを目ざしたチャレンジなのか」。いろいろ知りたかった。企業の概要オムロン京都太陽の取組み働く広場 2020.6オムロン京都太陽株式会社 人事総務課 課長 冨安秀樹さんオムロン京都太陽株式会社 代表取締役社長 三輪建夫さんオムロン京都太陽株式会社(左)と社会福祉法人太陽の家 京都事業部(右)就労継続支援A型事業所から一般就労へのステップアップを通じて雇用機会を創出障がい者の能力開発を通じて、B型事業所-A型事業所・就労移行支援事業所-特例子会社のラインを実現障がい者の就労拡大の根幹にあるのは企業理念123POINT※本誌では通常「障害」と表記しますが、オムロン株式会社様の要望により「障がい」としています21

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