働く広場2020年6月号
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働く広場 2020.6 研究活動においては、専門家ヒアリング、当事者に対するアンケート調査により、移動等困難障害者の就労の状況や、就労に関連する移動手段等の生活状況についての課題の整理を行い、その課題に対する支援方策等を、事例調査により整理、検討しました。 本稿では、25カ所の事業所を対象とした事例調査で把握された移動等困難障害者に対する﹁就労における移動﹂のための支援を、①通勤に対する支援、②事業所内における移動に対する支援、③事業所外における移動に対する支援、④その他の支援に分けて、移動制約者、移動困難者および交通制約者ごとに整理し、検討した結果を報告します(図2)。  通勤に対する支援としては大きく分けて、三つの方法がとられていました。 一つ目は通勤手段の提供です。例えば、重度障害者等通勤対策助成金を活用した通勤バスの運行があげられます。ある地域の事業主団体では、3事業所に勤務する5名の障害者に対し、この助成金を活用し、通勤支援を行っていました。このように1事業所のみならず、事業主団体が地域ぐるみで交通空白地域等の通勤問題を改善していくことも一つの方法と考えられます。 二つ目に、職住接近も有効な支援方法としてあげられますが、これをさらに進めていくためには、バリアフリー住宅やグループホームといった社会資源の充実が必要との声も聞かれました。 三つ目は、広い意味でさまざまな移動の問題 四肢障害や視覚障害等により、自力での通勤のための移動や、職場内での移動の際に介助が必要な困難を抱える障害者︵以下、﹁移動等困難障害者﹂︶については、従来、雇用労働者として働くことに課題を抱えてきたといえます。 近年では、情報技術の進展や社会全体の働き方の多様化等にともない、当該障害者の働き方についても多様化してきたとの声が聞かれるものの、ノーマライゼーションの実現のためには、障害に関わらず、﹁ともに働くことがあたり前﹂の環境をさらに整備していくことが求められています。 こうした取組みに向けて、本研究は、移動等困難障害者の就労の状況等についての調査を行うとともに、支援のニーズに対応する社会環境の整備状況等について、その実状等を把握することを目的としました。 研究に先立ち、先行研究の知見を基に、移動等困難障害者を、﹁移動制約者﹂、﹁移動困難者﹂、﹁交通制約者﹂に分類しました(図1)。就労に必要な移動等に困難がある障害者の実状等に関する調査障害者職業総合センター 事業主支援部門はじめに1通勤に対する支援228図1 本研究における移動制約者・移動困難者・交通制約者の定義と関係移動に際し、身体的・精神的な要因によって何らかの困難を伴うが、その困難性は個人要因・環境要因により変化し、一定の条件の下、特別な支援を必要とする移動等困難障害者移動に際し、常に特別な支援を必要とする移動等困難障害者地域特性等により移動手段が制約される移動等困難障害者(交通不便地域・空白地域に住み、自家用乗用車を利用できないために主として通勤に困難を抱える移動等困難障害者)交通制約者移動制約者移動困難者

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