働く広場2020年6月号
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働く広場 2020.6金属プレス加工やプレス金型製作を手がける「有限会社川田製作所」は、1969(昭和44)年の創業から51年が経つ"町工場"だ。自動車や産業用機械、OA機器などの部品を中心に、月あたり数百~百万個単位で受注加工している。従業員は18人。うち65歳以上の人が5人(最高齢76歳)、外国人が3人、障害のある人が6人(聴覚障害と内部障害が各1人、知的障害2人、発達障害2人)と、多様性に富んだ構成が特徴だ。川田製作所は2017(平成29)年度、経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれた。ここでいう「ダイバーシティ経営」とは、多様な属性の違いを活かし、個々の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目ざして、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組みをさす。2019(令和元)年10月に会長の川かわ田だ隆たか志しさん(80歳)から代表取締役を引き継いだ、息子の川かわ田だ俊しゅん介すけさんは、「ここ10年ほどの取組みが、結果として、ダイバーシティ経営企業に認められることになったのだと思います」とふり返る。 川田製作所には昔から、障害のある従業員が1人、2人いたそうだ。飛び込みで事務所に来た福祉施設職員に「働けそうな人がいるので雇ってみてもらえないか」と依頼されて軽作業を担当してもらったり、従業員が病気により内部障害を有するようになったりしたためだという。俊介さんは、もともとシステムエンジニアとして他社で働いていたが、2010年に川田製作所に入社した。当時は、従業員14人のうち55歳以上が11人(うち障害者2人)と、高齢化に向かうなかで「10年後のことを考えると若い人材も必要だと思っていました」と明かす。2014年ごろ、受注が増えてきたのを機にハローワークに一般の求人票を出した。仕事内容はプレス加工などだが、窓口の職員に「これは障害のある人でも可能ですか」と聞かれ、これまでのことを想定し「できます」と答えたという。そこから話はトントン拍子で進んだ。すぐに障害者雇用担当者に「職場を見学させてほしい」といわれ、求人票を出した数日後には、ハローワークと就労移行支援事業所のジョブコーチの2人が職場見学に訪れた。ほどなくして「推薦できる人がいるので実習させてほしい」と就労移行支援事業所から紹介されたのが、知的障害(中度)のある中なか武たけ矢なお輝きさん(24歳)だった。「ダイバーシティ経営企業」に一般の求人票で募集本人の苦手なことを補う工夫が職場全体の効率化に目標と成果を「見える化」して意欲向上も仕事ぶりで採用した結果、「ダイバーシティ経営企業」に123代表取締役の川田俊介さん入社6年目の中武矢輝さんは、プレス加工を担当している川田製作所では、ステンレスなどの金属をプレス加工し、パソコンなどに使用される部材を製作しているPOINT5

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